経営・管理ビザの500万円要件が更に厳しく?! 福岡の行政書士が解説

はじめに:この記事でわかること
本記事では、読売新聞(2025年6月10日報道)をもとに、経営・管理ビザの資本金要件に関する最新動向を解説します。主に以下のポイントを明らかにします。
読者の疑問 | 本記事でわかること |
---|---|
資本金500万円の要件はどう変わるのか? | 要件引き上げの可能性とその背景 |
変更はいつから施行されるのか? | 2025年度内に省令が改正される可能性もある |
変更の原因は何か? | ペーパーカンパニー対策と国際水準との整合性 |
現在の制度との違いは? | 現行要件の再確認と比較表で解説 |
専門家に依頼するべきか? | 行政書士の役割と実務的な支援内容 |

行政書士
河野(かわの)
私の事務所がある福岡でも、経営管理ビザのお問い合わせは少なくありません。福岡出入国在留管理局管内(福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)のビザでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
資本金はいくらになる? いつから? 原因と対策は?
経営・管理ビザの「金額要件」がどう変わるのか
出入国在留管理庁は経営・管理ビザにおける資本金要件(現在は500万円以上)を見直す方向で調整中とされています。検討されている案には「1,000万円以上」への引き上げや、外国人起業家の実績に応じた柔軟な基準設定も含まれているといわれています。
比較表:資本金要件の国際比較
国名 | 資本金要件(目安) | 備考 |
---|---|---|
日本(現行) | 500万円以上 | 職員2人以上の雇用でも代替可 |
韓国 | 約3,000万円相当 | 実態審査が厳格 |
シンガポール | 約1,000万円前後 | 条件付きで柔軟運用あり |
金額要件の変更はいつから?
変更は2025年度中の法務省令改正を目指す(予定)とされており、実施時期については「公布後数ヶ月の準備期間を設ける方針」とされています。したがって、現行制度での申請は2025年度内がラストチャンスになる可能性があります。
金額要件が変わる原因とは
1. 目的外利用(制度の悪用)への対策強化
背景:
現行の500万円要件は、資本金の振込だけで形の上では要件を満たすことが可能であり、これを利用して以下のような制度の抜け穴が生まれていました。
- 実際には事業を開始する意思がないのに、在留資格(ビザ)目的で会社を設立
- 実態のないオフィスを借りただけのペーパーカンパニー
- 在留資格(ビザ)を得た直後に活動実態のないまま更新手続き

行政書士
河野(かわの)
これらのケースは、「経営・管理ビザ」の本来の趣旨である「日本で事業を行い、雇用・経済貢献する外国人を受け入れる」という方針に反しており、制度の信頼性を損なう結果となっています。
今回の見直しの意図:
- 資本金要件を厳しくすることで、実態のない起業希望者の排除
- 真に日本で事業を行う意思と能力を持つ人材に絞る
2. 国際的な水準との整合性
海外の状況:
国名 | 必要な投資額・要件 | 特記事項 |
---|---|---|
韓国 | 約3,000万円以上 | 韓国法人設立、オフィス実体証明が厳格 |
シンガポール | 約1,000万円相当 | 実績に応じたスコア制、イノベーション評価もあり |
アメリカ | 実質5万ドル以上(700万円~) | 雇用創出や収益計画の実効性が審査対象 |

行政書士
河野(かわの)
500万円という額は上記各国に比べて低い基準であり、「簡単に在留資格(ビザ)を取得できる国」として認識されている、と言われています。
今回の見直しの意図:
- 国際的な水準に合わせる
- 外国人起業家の質の向上と制度のブランド力を維持する
3. 審査運用の方向性転換(形式から実質へ)
従来:
- 書面上の整合性を重視した形式審査
- 資本金や事務所など、「チェックリスト方式」で審査
現在の流れ:
- 経営の実態を重視する運用へシフト
- 収支の見込、顧客の有無、オペレーション体制などを確認
- 出入国在留管理庁の審査要領でも「継続性・安定性の立証」が強調されている
今回の見直しの意図:
- 単なる形式的な会社設立では許可しない
- 起業家本人の経営経験、ビジネスの将来性、収益計画の裏付けを求める運用へ移行
まとめ:金額要件見直しの本質
観点 | 目的 | 結果として求められる対応 |
---|---|---|
制度の健全性 | 虚偽・形式的申請の排除 | 実態を伴った会社設立と事業運営 |
国際整合性 | 海外との水準調整 | より高度な起業能力と資金計画 |
審査運用 | 実質的審査への移行 | 収支計画・契約書・顧客証明の準備 |

行政書士
河野(かわの)
これらの変化は、単に「金額が上がる」だけではなく、「経営実態の裏付け」がより一層求められる制度改正になることが想定されます。事業計画と出資根拠の整備を主導する役割がますます重要になります。
現在の「経営・管理」ビザの要件を解説
概要:どんな活動が認められるのか?
経営・管理ビザ(在留資格「経営・管理」)は、以下の活動を対象としています:
- 日本国内において会社や事業所を設立し、自ら事業を経営する
- 既存の事業の経営または管理に従事する(例:支店長・取締役)
この章の情報は、出入国在留管理庁公式ホームページを要約しています。
要件1:事業所の確保
必須条件:
- 独立した事業所(オフィス、店舗等)を日本国内に確保していること
- 原則として賃貸契約書や登記簿謄本(履歴事項全部証明書)などの提出が求められます
- 自宅・バーチャルオフィス・郵便転送専用の住所は不可
実務上の注意点:
- 共同オフィスは原則不可(ただし、間仕切りなどで独立性が確保されていれば例外あり)
- 開業前でも「将来の営業予定地」として認められるには、具体的な計画書と契約書が必要
要件2:経営規模(資本金または雇用)
以下のいずれかを満たす必要があります:
区分 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
資本金方式 | 会社の資本金が500万円以上であること | 設立時に全額払い込みが原則 |
雇用方式 | 常勤職員2名以上を雇用していること | 雇用契約、給与支払い実績などの証明が必要 |

行政書士
河野(かわの)
「常勤職員2名以上」を選択する場合、短期のアルバイトではなく、社会保険加入・週40時間勤務等の常勤性が必要です。
要件3:事業の安定性・継続性
単に形式的な設立では不十分であり、以下のような実態証明が求められます。
審査項目 | 具体的な資料例 |
---|---|
事業の計画性 | 事業計画書、収支見込書、業種の将来性を説明する資料 |
顧客・取引先の有無 | 見積書、契約書、受発注履歴、取引先とのメールなど |
財務的な基盤 | 銀行口座の取引履歴、投資計画、営業許可証など |
法令順守体制 | 各種許認可(風営法、飲食業等)、就業規則 |
要件4:経営または管理への実質的関与
申請者が単なる名義人や資本提供者ではなく、「経営者」または「管理職」として活動していることが必要です。
ケース | 扱い |
---|---|
自ら設立した会社の代表取締役 | 原則として経営関与が認められる |
親族が経営する会社の役員 | 役割や報酬の実態証明が必要 |
他人が実質的に経営している会社の名義社長 | 却下の可能性が高い |
要件5:報酬・生活能力
申請者が経営に従事することで日本国内で生活できる報酬・収入が見込まれることも必要です。
- 原則:日本人が従事する場合に支払われる水準の報酬(=日本人の最低賃金以上)
- 証明資料:給与規定、納税予定、給与支払い計画書、生活費支弁方法書など
要件6:必要な資格・許認可(業種による)
業種によっては、以下のような法令に基づく営業許可・登録が必要です。
業種 | 必要な許認可 |
---|---|
飲食業 | 食品衛生責任者の資格・飲食店営業許可 |
不動産業 | 宅地建物取引業免許(都道府県) |
中古品販売 | 古物商許可(公安委員会) |
補足:提出が望ましい書類一覧(例)
- 事業計画書
- 会社の定款・登記簿謄本
- 資本金払込証明(通帳コピー、送金証明書等)
- 賃貸契約書およびオフィスの写真
- 雇用契約書・給与台帳(雇用方式の場合)
- 業種に必要な許認可証の写し
- 所得税・住民税の納付計画(あるいは前歴があれば納付証明)

行政書士
河野(かわの)
以上が、経営・管理ビザの現在の要件の概要です。形式的な条件を満たすだけでなく、事業の実態を総合的に証明する必要があるため、申請書類の整備や事前の計画が非常に重要になります。
必要に応じて、これらの要件に適合するための補足資料や証明方法も個別にアドバイス可能です。ご希望があればお知らせください。
FAQ(よくある質問)
-
資本金500万円はどこからの資金でも構いませんか?
-
資本金は原則として本人が自由に使える正当な自己資金である必要があります。親族や第三者からの資金提供は可能ですが、その場合は出資の事実を証明する契約書、送金証明、贈与契約書などの提出が求められる可能性があります。「見せ金」の場合は不許可になります。
-
事業開始前にビザは取れますか?
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事前の準備段階での申請は可能ですが、会社設立済み・資本金払込済み・オフィス確保済みが前提です。まだ契約前・登記前・資金未払込では、不許可になります。
-
日本人名義で設立した会社を外国人が経営しても申請できますか?
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外国人が実質的に経営に関与している証明が必要です(役職・報酬・業務指示の実態など)。単なる名義貸しやペーパーカンパニーと疑われる場合は不許可になります。
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常勤職員2人を雇用する場合、パートタイムや業務委託ではダメですか?
-
パート・アルバイト・業務委託(フリーランス)では要件を満たしません。厚生年金・雇用保険などに加入した「社会保険上の常勤職員」が対象です。週40時間相当の労働契約が必要です。また、常勤職員2人は、日本人または居住ビザを持つ外国人(永住ビザ、配偶者ビザ、定住者ビザなど)に限られます。
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経営経験がない場合でもビザは取得できますか?
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可能ですが、事業計画や準備の整合性、業界知識の有無、コンサルタント・支援体制の有無などを丁寧に説明・立証する必要があります。経営経験があれば信頼性が高まりますが、必須条件ではありません。
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飲食店や美容室など許可業種の場合、ビザ申請と同時に営業許可も必要ですか?
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原則として、許可証は取得済みであることが望ましいです。ただし、許可申請中であっても、開業準備が進んでいることを示せれば認定される場合もあります。行政書士等の補足説明書や事業スケジュール提出が有効です。
-
更新時には再び500万円の資本金が必要ですか?
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不要です。更新時に求められるのは、事業の継続性・収益性・経営実態です。資本金残高ではなく、事業実績(売上、利益、雇用継続など)や納税状況が審査対象となります。
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配偶者や子どもも同時に日本に呼べますか?
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「経営・管理」の在留資格(ビザ)で在留する方には、「家族滞在」の在留資格を通じて配偶者および未成年の子を帯同することが可能です。同行予定がある場合は、同時申請または別途の家族滞在申請を行ってください。詳しくは、以下のページでも解説しています。
-
留学や技能実習からの変更も可能ですか?
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可能です。ただし、活動内容が大きく変わるため、真に独立して事業を行う意思と準備が整っていることを明確に立証する必要があります。経営ノウハウや日本語能力が問われることもあります。
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海外から経営管理ビザをもらうためには、どんな手続きが必要ですか?
-
経営管理ビザの「在留資格認定証明書交付申請」という手続きが必要です。詳しくは、以下のページで解説しています。
-
ビザ申請が不許可になった場合、再申請できますか?
-
可能ですが、不許可理由を明確に分析し、改善したうえでの再申請が必要です。形式的な再提出は逆効果になることもありますので、専門家に相談し、説明資料や補足証明を整えることが重要です。
行政書士に依頼するメリット
経営・管理ビザ申請には以下のような実務的な支援が求められます。
項目 | 行政書士の支援内容 |
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出資証明の整理 | 銀行送金記録、契約書等の精査と添付書類の整備 |
事業計画書の作成 | 財務計画、業種ごとの審査基準に即した記載支援 |
実態性の証明 | 顧客リスト、取引書類、営業実績などの書類作成 |
最新の法令対応 | 改正内容の速報と適切な対応方針の提案 |
経営・管理ビザの資本金要件引き上げは、実質的に「形だけのビザ取得」が難しくなる方向への大きな転換点です。2025年度中の省令改正が見込まれるため、申請を検討している方は「できるだけ早期の申請」をご検討ください。
また、制度改正後も対応するためには、「事業の実態性」をしっかりと証明できる体制を整えておくことが必要です。行政書士などの専門家による支援を活用することで、確実かつ迅速な申請が可能になります。

行政書士
河野
今回の解説は以上です。弊所のサービス内容や価格、手続きの流れ、許可の可能性診断につきまして無料相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。オンライン(ZOOM、LINE、WeChat、Teamsなど)での面談も対応しております。

国際行政書士 河野尋志プロフィール
企業の取締役として外国人の社員さんと一緒に国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。また行政書士業務を始めてからは、様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えてサポート致します。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)
以下は、就労ビザ申請に関する情報一覧です。気になる情報があれば是非ご覧ください。