帰化や永住の専門行政書士が資産や貯金について解説

日本で長く暮らしている外国人の方から、よくご相談を受けるのが次のようなご質問です。

「収入が少ない(不安定)でも、持っている不動産や貯金が多ければ帰化や永住ビザ申請は許可されますか?」

結論、不動産や貯金が多いだけではプラス評価される可能性はありますが、それだけでは許可されません。

はじめに:この記事でわかること

  • 帰化申請と永住ビザ申請における「収入」と「資産」の評価の違い
  • 不動産や預貯金がどこまで考慮されるのか
  • 許可されやすいケース、されにくいケース
  • 行政書士に依頼するメリット
行政書士
河野
(かわの)

九州・沖縄エリアでの帰化申請や永住ビザ申請でお困りの際は、福岡法務局など福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄エリアを専門とする私にご相談ください。初回ご相談は無料、オンライン面談にも対応しています。

帰化申請と永住ビザ申請で、不動産や貯金があれば収入は低くてもOK?

帰化申請における収入・資産の評価

帰化審査で問われる「生計の安定性」とは

帰化申請では、日本国籍を取得するにふさわしい人物かどうかが総合的に判断されます。その中でも重要な審査項目の一つが「生計の安定性」です。

これは単に収入の有無だけでなく、「今後、日本で継続して自立した生活ができるか」という観点から判断されます。生活保護を受給していたり、継続的な収入が見込めない場合は、不許可となる可能性が非常に高くなります。

収入の基準と評価方法

1. 年収の目安

審査基準に明確な数値基準はありませんが、実務上、次のような年収が一つの目安とされています。

家族構成推奨される最低年収(目安)
単身約300万円
配偶者あり約350~400万円
配偶者+子1人約400~450万円

年収がこの水準に達していない場合、帰化の審査は厳しくなる可能性があります。

2. 就労の継続性

「今年だけ収入がある」のではなく、少なくとも過去3年程度、継続的に安定した収入があることが望ましいとされています。源泉徴収票、課税証明書、納税証明書などで確認されます。

資産の評価

1. 不動産(持ち家、土地など)

不動産を所有していることは、一定の安定性の証明にはなります。ただし、それが自己の居住用か、投資用か、ローンの残債があるかによって評価が分かれます。

不動産の種類審査上の評価
完全にローン返済済みの持ち家プラスになる
所有する賃貸物件で収入がある場合プラス(ただし収入の安定性が必要)
ローン残債が多い場合マイナス評価になる場合あり

2. 預貯金

一定額の預貯金は補足的にプラス評価されますが、貯金があるだけでは許可されないと考えるべきです。特に現役世代(30代~50代)では、貯金だけで「生活が安定している」とは判断されません。

預貯金額評価の傾向
数百万円未満影響は小さい
1,000万円以上プラス要素だが、収入がないと許可されない。長期間、計画的に貯金し続けていれば、計画性が評価される可能性あり
一時的に増やしたものマイナス(その貯金をどのように増やしたかを確認され、出所が怪しいと逆効果)

3. 株式・投資信託など

価格変動のリスクが高いため、「資産」として提出は可能ですが、評価は限定的です。生活基盤を支える安定性という観点では、あまり強い要素にはなりません。

特例的に資産が評価されるケース

  • 65歳以上の高齢者:年金+資産(預貯金・不動産)がある場合は、一定の条件で許可されることがあります。
  • 配偶者が収入を得ている場合:申請者本人に収入がなくても、世帯収入全体が安定していれば許可される可能性があります。
  • 特別帰化・簡易帰化対象者:親族に日本人がいるなどの事情により、一部要件が緩和される場合があります。

書類提出のポイント

提出書類内容
源泉徴収票過去3年分
市町村の課税・納税証明書自治体で発行、年収と納税状況の確認に使用
国税の納税証明書税務署で発行、国税(所得税など)の納付状況を確認
預金通帳のコピー残高が確認できるページ数ヶ月分を提出
不動産登記簿謄本登記内容・所有者・ローンの有無を確認
行政書士
河野
(かわの)

このように、帰化申請においては「安定した収入」が中心的に評価されます。不動産や貯金があるからといって安心せず、これまでどのように生活してきたか、今後、どのようにしていくかを具体的に示すことが重要です。

永住ビザ申請における収入・資産の評価

永住ビザ(在留資格「永住者」)の取得は、日本で長期的に安定して生活している外国人にとって、大きな安心につながります。しかし、永住ビザが許可されるためには厳格な審査が行われ、とくに「独立した生計」が重要な審査要件の一つです。

永住許可の法的要件

出入国管理及び難民認定法(入管法)第22条第2項に基づき、原則、以下の3つの要件が求められます。

  1. 素行が善良であること
  2. 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  3. その永住が日本国の利益に合すると認められること

本記事では、この中でも「独立の生計要件」に注目して詳しく解説します。

独立の生計要件とは何か?

「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」とは、申請者が日常生活において公共の負担にならない自立した生活ができるかという点を指します。

評価される具体的要素

評価項目審査上の意味補足
年収安定した収入源があるか一般的に300万円以上が目安
勤務先・職種継続性・安定性があるか勤務年数や職場の信頼性も考慮
世帯収入本人に収入がなくても、配偶者に収入があれば考慮される世帯単位で評価される
資産(預貯金、不動産など)将来的な生活の安定性高齢者などでは重要な評価要素
技能専門的な職業スキルの有無高度人材ポイント制度も活用可能

年収の目安と注意点

家族構成推奨年収の目安
単身約300万円
配偶者あり約400万円
子ども2人以上約500万円以上

※あくまで目安であり、審査は個別事情も加味されます。

また、申請時点での収入だけでなく、過去の収入推移(通常3〜5年分)も見られます。急激な増減がある場合は、その理由を説明できるようにしておきましょう。

行政書士
河野
(かわの)

通常の就労ビザから永住ビザ申請する場合は5年間の年収が確認されます。5年の間、年収の目安以上の収入を得ているのが原則です。よく質問されますが、1年や2年ではなく、5年間継続している必要があります。

永住ビザ申請における収入の重要性については、詳しくは、以下のページで解説しています。

日本の永住権申請における収入の重要性|福岡の行政書士が解説

日本の永住権が許可されるためには「安定した収入」は必須です。自分の生活だけでなく、ご家族がいる場合は、ご家族も含めて「永住者になった後も、安定して生活を継続で…

資産が評価されるケース

収入が不足している場合でも、十分な資産があれば許可される可能性があります。

評価される資産の例

資産の種類審査での評価
預貯金安定的に生活できる預貯金があれば評価される可能性あり(目安1,000万円以上)。ただし、一時的に増やした金額ではなく、長期間、計画的に貯金してきた実績でないと評価されにくい
不動産自己名義の持ち家などがある場合、評価される(ローン残債はマイナス)
投資資産(株、投信)安定性が低く、限定的な評価になる場合あり

※特に年金生活者、高齢者、配偶者に収入がある場合などは、資産重視の審査が行われる可能性があります。

技能や職種による加点要素

  • 高度専門職制度により70点以上を取得している場合は、在留期間が短くても永住申請可能
  • 特定分野(IT、研究、教育など)の職種は加点対象となる可能性あり

高度専門職ビザから永住ビザ申請について、詳しくは以下の記事も参照ください。

高度専門職ビザから永住権取得は最短1年|注意点・不許可リスクとその対策|福岡の行政書士が解説

高度専門職ビザは永住権取得の最短ルートですが、届出義務や納税・年金の不備で不許可になることも。確実な永住申請のための注意点と対策をお伝えします。

評価されない資産の例

資産の種類理由
借入金で一時的に増やした預金返済義務があるため、実質的な資産とはみなされない
他人名義の資産所有者が本人でなければ評価の対象外
相続予定の財産将来取得予定のものは原則として評価されない

書類提出のポイント

書類名用途
源泉徴収票過去の年収の証明
課税証明書自治体が発行、総所得・税額の確認
納税証明書(その1・その2)所得税の納付状況確認
預金通帳のコピー残高と継続的な資金の流れを証明
不動産登記事項証明書名義と権利関係の確認

よくある誤解

  • 「一時的にお金を預けて残高を増やせば有利」はNG。審査では資金の出所や履歴も厳しく見られます。
  • 「配偶者に収入があるから自分は無収入で大丈夫」は半分正解。世帯全体の安定性が見られるので、配偶者の収入証明が必要です。

まとめ

  • 永住申請においては、「安定収入」が基本ですが、「十分な資産」も補足的に強い武器になります。
  • 特に高齢者や世帯申請の場合は、資産の評価がより重視されます。
  • 実際の評価は申請者ごとの状況により異なるため、事前に専門家に相談することが重要です。

私は福岡に拠点を構える行政書士で、福岡法務局および福岡出入国在留管理局への申請実務を行なっています。個別の状況に応じて、収入・資産要件の整理から申請書類の作成、面接対策まで幅広くサポート可能です。

行政書士
河野
(かわの)

お気軽にご相談ください。初回ご相談は無料!オンラインでの面談にも対応しております。

FAQ:よくある質問

年収が300万円未満でも帰化や永住はできますか?

単身者であれば年収250万円台でも許可されたケースはありますが、世帯構成や居住費・扶養者の有無によって審査結果は変わります。特に扶養家族が多い場合は、収入基準が引き上げられます。資産がある場合は補足的に考慮されますが、収入が少ない場合は「不許可」になる可能性が高まります。

帰化や永住の年収基準について、詳しくは以下の記事も参照ください。

帰化申請と永住ビザ申請の「年収基準」を比較|福岡の行政書士が解説

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アルバイトでも帰化・永住申請はできますか?

雇用形態は問いませんが、安定性と継続性が審査のポイントになります。アルバイトでも一定以上の収入があり、数年間同じ職場で勤務している場合は許可される可能性がありますが、不安定な職歴はマイナス要因となります。

過去に交通違反があると帰化・永住できませんか?

軽微な違反(例:スピード違反や駐車違反)であれば、反省文や再発防止策を提出することで影響を最小限に抑えることができます。目安は、2年間で2回までです。ただし、酒気帯び運転や重大な違反がある場合は、一定期間(通常5年以上)、時間をあけた方が良いとされる場合もあります。

永住ビザ申請と交通違反の関係について詳しくは、以下のページで解説しています。

永住権を申請する際の「交通違反」の影響と対策|福岡の行政書士が解説

永住権(永住者ビザ)を取得することは、多くの外国人の方にとって大きな目標です。永住者になると、日本での滞在が無期限になり、在留資格の更新を気にせずに安定した生…

留学ビザや技能実習ビザからでも永住ビザ申請はできますか?

留学や技能実習の在留資格は「永住申請の対象外」とされます。永住申請のためには、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格で5年以上継続して在留していることが必要です。例外的に高度専門職などは早期申請が可能です。

帰化や永住に必要な「年数」について詳しくは、以下のページで解説しています。

帰化申請と永住ビザ申請の必要年数まとめ|福岡の行政書士が解説

帰化申請と永住ビザ申請に必要な年数を分かりやすくまとめました 帰化申請、永住ビザ(永住者)申請についてご質問をいただくことが多いのが「帰化申請や永住ビザ申請でき…

帰化申請では、国籍を放棄しなければなりませんか?

日本では重国籍を原則認めていないため、帰化後は現在の国籍を放棄する必要があります。ただし、国によっては「国籍離脱」が困難な場合があり、そうしたケースでは個別の対応が必要です。

なお、国籍を離脱する手続きは、母国側の制度や事情が影響し、国・地域によっては1年以上かかることもあるため、帰化審査全体がさらに長期化します。詳しくは、以下のページで解説しています。

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永住申請後に海外出張や一時帰国しても問題ありませんか?

申請中の出国は可能ですが、必ず「みなし再入国許可」で出国する必要があります。長期の出国(1年超)や、出国して連絡が取れなくなる場合は「不許可」となる原因にもなります。出国予定がある場合は、あらかじめ相談して、計画的に出国しましょう。

帰化申請の面接ではどんなことを聞かれますか?

面接では「なぜ日本国籍を取得したいのか」「日本の生活にどのように適応しているか」など、日本社会への同化度や日本語能力が重視されます。また、税金や年金、家族関係などの確認も行われます。

永住申請はいつから可能になりますか?

一般的には日本で10年以上在留し、そのうち就労資格または居住資格で5年以上の継続在留があることが条件です。ただし、配偶者ビザや高度専門職に該当する場合は、在留期間が短縮される特例があります。

自分では収入がないが、配偶者に安定収入がある場合はどうですか?

帰化・永住ともに「世帯収入」で判断されるため、配偶者に十分な収入があれば申請は可能です。その場合、配偶者の課税証明書や源泉徴収票などの書類提出が必要です。

書類が多くて準備が大変です。手伝ってもらえますか?

行政書士として申請に必要な書類収集、翻訳、申請書の作成、法務局とのやり取り、面接対策まで一貫してサポートします。福岡出入国在留管理局への対応もお任せいただけます。スムーズな申請をお手伝いします。

まとめ

  • 帰化申請も永住ビザ申請も、安定した収入が第一に評価される
  • 不動産や貯金などの資産は補足的に評価される
  • 高齢者や配偶者が収入を持つケースでは、資産評価の比重が高まる
  • 正確な判断には専門家の支援が不可欠

九州・沖縄(福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)で帰化申請・永住ビザ申請を検討中の方は、福岡法務局福岡出入国在留管理局の手続きを専門にしている私にご相談ください。

行政書士
河野
(かわの)

お気軽にご相談ください。初回ご相談は無料!オンラインでの面談にも対応しております。

帰化
永住権許可申請の専門家国際行政書士河野尋志

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投稿者プロフィール

国際行政書士 河野尋志
国際行政書士 河野尋志
外国人の社員さん達と一緒に企業の取締役として国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。行政書士業務を始めてからは様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えてサポート致します。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)