帰化と永住の要件の共通点と違いを行政書士が解説

はじめに:この記事でわかること

外国人として日本での生活が安定してくると、帰化と永住のどちらを選ぶか迷う方が増えてきます。帰化と永住で求められる要件には共通点がありますが、逆に、根本的な違いや要件の違いも多くあります。共通点と違いを理解した上で最適な選択をしましょう。

この記事では、以下の内容を詳しく解説します。

  • 帰化と永住の制度の違い
  • 共通する審査要件、全く違う要件の具体的な内容
  • 帰化と永住のみに特有の審査ポイント
  • 法務局での申請をスムーズに進めるためのアドバイス
行政書士
河野
(かわの)

九州・沖縄エリアでの帰化申請や永住ビザ申請でお困りの際は、福岡法務局など福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄エリアを専門とする私にご相談ください。

帰化申請と永住申請には共通する条件と、まったく違う条件があります

帰化と永住の違いとは?

帰化と永住の最も大きな違いをひとことで言えば、「国籍を変えるかどうか」です。どちらとも日本に長期的に住み続けるための制度ですが、その法的地位には大きな差があります。

帰化と永住の根本的な違い

項目永住帰化
法的地位外国籍のまま在留資格を得る日本国籍を取得
管轄法制度出入国管理及び難民認定法(入管法)国籍法
審査機関出入国在留管理庁法務局
国籍外国籍のまま現在の国籍を失い、日本国籍を取得
戸籍制度戸籍なし(住民票のみ)日本人として新たに戸籍が編製される
選挙権なしあり(参政権・選挙権)
国家公務員原則不可
再入国許可必要(再入国許可またはみなし再入国)不要
退去強制の可能性ありなし(日本人であるため)

法務省公式ホームページ「国籍Q&A」も参考までにご覧ください。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html

出入国在留管理庁公式ホームページ「永住許可に関するガイドライン」も参考までにご覧ください。

https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html

行政書士
河野
(かわの)

どちらの公式ホームページもなかなか分かりにくいので、詳しくはお気軽にお問い合わせください。

帰化永住に共通する審査要件とは

帰化(普通帰化)と永住とは、それぞれ別の制度ですが、審査にあたって共通して重視される基本的な「生活の安定性」と「法令順守」があります。以下に、3つの主要な共通要件を詳しく解説します。

1. 素行要件:日本社会の一員としてふさわしいか?

素行要件とは、日本での生活が法令に則り、社会的に信用される行動を取っているかどうかを審査するものです。

評価項目内容審査での注意点
交通違反駐車違反、スピード違反、信号無視など年数・頻度が多いと不許可の可能性あり
税金の納付所得税・住民税・消費税などの納付履歴過去に延滞があっても、現在完納していれば挽回可能な場合あり
年金・保険料の支払い国民年金・健康保険・介護保険など帰化では未納があっても追納すればOK、永住では追納しても一定期間は許可されません
刑事処分歴前科、執行猶予、罰金、保護処分など内容・時期によっては不許可
家庭内の状況DV歴、児童虐待、養育義務違反など特に帰化審査では家族との関係も重要視される
行政書士
河野
(かわの)

軽い法律違反でも、複数回あると「日常的な法令軽視」と判断される可能性があります。まや、納税は「期限内」に行われていたかどうかも厳しく審査されます。

2. 生計要件:経済的に自立しているか?

永住・帰化ともに、「公共の負担にならないこと」が大前提です。安定した収入や資産があるかどうかが問われます。

評価項目内容審査での注意点
職業・勤務形態正社員・契約社員・個人事業主など勤続年数・雇用の安定性も評価される
年収の目安一人暮らしであれば概ね年収300万円前後が基準扶養家族が多い場合はそれ以上が必要
扶養状況家族構成と扶養の実態(仕送りの有無など)配偶者の収入と合わせて評価される場合あり
資産の有無預金残高、不動産、投資など収入が少ない場合でも、資産があれば許可される場合あり
社会保障加入状況健康保険・年金の種類と加入期間未加入期間があるとマイナス評価。特に永住申請では不許可の可能性大

収入の目安(参考)

世帯構成推奨される年収の目安(概算)
単身者約300万円以上
夫婦(配偶者専業)約350〜400万円以上
子供1人扶養約450万円以上
行政書士
河野
(かわの)

上記はあくまで目安です。収入は、地域によっても差があります。詳しくはお問い合わせください。

3. 居住歴・在留資格の安定性

日本でどれだけ継続して在住し、どのような在留資格で過ごしてきたかも審査されます。

比較項目永住許可(原則)帰化(普通帰化)
必要な在住年数原則10年以上原則5年以上
内訳原則、就労ビザで働いた年数が5年以上が必須日本在住5年で申請する場合でも、就労ビザで働いた年数が3年以上でOK
継続的な居住明文化されていませんが、連続して3ヶ月、年間100〜180日の出国歴があると不許可の可能性あり明文化されていませんが、連続して3ヶ月、年間100日の出国歴があると不許可の可能性大
在留資格の安定性最長の在留期間(例:3年または5年)であること2022年から、永住申請と同じ運用になりました
転居回数頻繁な転居は場合によっては「安定性の欠如」と判断永住申請と同じ
在留資格の変更歴目的外活動歴・オーバーワーク等はNG同上

このように、共通の要件は「まじめに、日本で安定して生活しているか」を多角的に審査されます。これら書類で正しく証明すれば、帰化・永住のいずれでも許可される可能性が高まります。

共通しない要件とは?

帰化(普通帰化)と永住は、いくつかの審査項目が共通している一方で、それぞれ特有の審査要件も存在します。この章では、帰化のみで求められる要件永住のみで求められる要件を比較しながら詳しく解説します。

帰化申請だけに求められる要件

帰化は「外国籍から日本国籍へ移る制度」です。そのため、単なる在留資格の延長ではなく、「日本人になるにふさわしいか」が本質的な審査基準となります。

要件名内容注意点・審査傾向
日本語能力小学校低学年レベルの読み書き・会話が求められる会話力だけでなく、漢字を含む読み書きも重視される
思想要件日本国憲法を尊重する立場であること反社会的、極端な政治・宗教思想があると不許可になりやすい
真正な帰化意思形式だけでなく「心から日本人になりたい」という態度が問われる動機書、面接での態度、書類準備への真剣さなども評価対象
国籍喪失義務原則として母国の国籍を放棄し、日本国籍のみを保有する必要がある二重国籍を認めない日本の原則に基づく
宣誓書の提出日本国民として法令を守る旨を誓う書類面接時に独特の雰囲気の中で署名する場面があり、精神的な覚悟も確認される
行政書士
河野
(かわの)

国によっては国籍放棄手続きが複雑で時間がかかるため、申請の早期準備が大切です。日本語能力については、日本語能力試験(JLPT)での証明が不要な代わりに、テストが行われる場合があります。

永住申請だけに求められる要件

永住はあくまで「在留資格の一種」であり、外国籍を維持したまま日本に住み続けることを前提とした制度です。そのため、「日本国にとって利益になる存在かどうか」が特に重視されます。

要件名内容(原則)注意点・審査傾向
国益適合要件原則的には、日本に10年以上滞在し、5年以上は就労ビザで生活していること一時帰国や資格変更の履歴が多いと「継続して居住していない」と評価される可能性あり
衛生条件公衆衛生上有害でないこと(感染症など)帰化には明確な要件として存在しない
申請後の継続適正永住許可後も公的義務を履行し続けていることが前提許可後に納税義務を怠るなどすると資格取消の可能性あり

比較一覧:帰化永住どちらにしかない審査内容

審査項目永住許可にのみある帰化にのみある
国籍喪失義務×
宣誓書の提出×
真正な帰化意思×
思想的適格性△(明示なし)
日本語能力の証明△(暗黙に必要)
衛生条件×
将来的適正の重視〇(永住許可後も管理)△(国籍取得後は対象外)
行政書士
河野
(かわの)

このように、永住と帰化にはそれぞれ独自のハードルがあります。特に帰化は「日本人としての人格・意思・覚悟」を問うものであり、単に長く住んでいるだけでは足りません。

一方で、永住は「在留資格の最終形」として、生活の安定性と将来的な信頼性が重視されます。自身の希望や将来設計に応じて、どちらの制度を選ぶかを見極める必要があります。

行政書士に依頼するメリット

法務局での申請において、書類の不備や面接での誤解が原因で不許可になる場合もあります。実情に詳しい専門家のサポートを受けることで、以下のようなメリットがあります。

  1. 法務局の審査傾向に即したアドバイス
  2. 面接対策(想定質問の練習)
  3. 書類の正確な作成と翻訳
  4. 提出スケジュールの管理と代行
  5. 不許可リスクの事前診断と対策
行政書士
河野
(かわの)

お気軽にご相談ください。初回ご相談は無料です。

よくある質問(FAQ)

帰化と永住、どちらの方が許可されやすいですか?

許可率だけを見ると、帰化の方が高いです。ただし帰化申請をする前の段階で法務局から「許可されないので申請しない方が良い」とうながされる場合も多いため、許可率だけを見て帰化の方が許可されやすい、という考えるのは誤解です。

帰化と永住の許可率の違いについて以下のページで解説しております、参考までにご覧ください。

帰化の許可率が高い理由・永住ビザ申請の許可率が低い理由|福岡の行政書士が解説

(ご相談無料)帰化申請と永住申請の許可率はなぜこんなに違うのでしょうか?この記事では、それぞれの制度の違いや審査の仕組みをもとに、帰化が高い許可率である理由、…

帰化と永住、どちらが申請しやすいですか?

より短い期間で申請できる、という考え方であれば、帰化(普通帰化)の方が永住申請(原則要件)よりも短期間で申請できるため、一般的には永住の方が要件が緩やかです。ただし、帰化は申請が許可される期間が永住よりも長く、日本語力や思想の確認なども加わります。

帰化と永住、国籍ごとに対応の違いはありますか?

当然ですが、帰化も永住も、国籍ごとに要件の違いはありません。ただ、国籍ごとに「帰化と永住、どちらを選ぶか」は特徴があります。詳しくは、以下の記事を参照ください。

帰化と永住ビザはどちらが選ばれる?増加数を分析|福岡の行政書士が集計

(ご相談無料)帰化と永住、どちらが選ばれているのか?中国・韓国・ベトナムなど主要国の国籍別データをもとに、帰化許可数と永住者数の推移を比較。今後の傾向や申請戦…

家族全員で同時に申請する必要はありますか?

帰化でも永住でも個人単位での申請が可能です。ただし、永住が許可された場合で、申請人(永住者になった外国人)が扶養している配偶者や子供がいる場合は、家族滞在ビザから「永住者の配偶者等」などに変更する必要があります。現実的には「家族で永住申請する」のが一般的です。

帰化と永住、どちらが「安全」ですか?

「安全」の定義によりますが、もし「強制退去されることがない」ことを安全とするなら、帰化は日本国籍を取得するため、退去強制のリスクが完全になくなります。一方、永住者は重大な違反があれば資格が取り消され、最悪の場合、国外退去になる可能性はあります。

帰化と永住の違いについては、以下のページでも解説しています、参考までにご覧ください。

帰化

(更新者:国際行政書士 河野尋志) このページでは、「帰化」のメリットや永住ビザとの違い、帰化の要件や申請の流れを解説することで、帰化申請の概要を把握していただ…

日本語があまり話せません。帰化は無理ですか?

帰化審査では日本語能力(読み書き・会話ともに)が重視されます。目安としては小学校低学年レベルの日本語力が必要です。面接や提出書類の内容で判断されるため、不安がある方は事前に対策をたてることをおすすめします。

税金や年金を過去に滞納していたのですが、影響しますか?

影響します。帰化申請でも永住申請でも、納税や保険料の滞納歴があると「素行不良」と見なされ不許可にある可能性があります。現在は完納しており、過去の事情に合理的な説明ができれば、審査上不利にならない場合もあります。

永住許可があれば帰化は不要ですか?

永住許可があっても、選挙権や戸籍など、日本国民としての権利は得られません。また、退去強制の対象にもなり得ます。日本人として生きたい、法的にもより安定した地位を望むなら帰化が適しています。

帰化の面接はどんなことを聞かれますか?

主に以下の内容が質問されます。

  • なぜ帰化を希望するのか
  • 家族構成や生活状況
  • 日本文化・社会に関する基礎知識(祝日や法制度など)
  • 仕事・収入・納税状況
  • 日本語による受け答えの確認

不安があれば模擬面接などの事前準備をおすすめいたします。

帰化申請と永住申請を同時に出すことはできますか?

現実的には、どちらか一方を選んで申請する必要があります。現在の状況と将来の目標に応じて、どちらが適しているかをじっくり考えて選んでください。

離婚歴や交通違反があると不利ですか?

離婚歴は原則として審査に直接影響しませんが、扶養義務の履行状況などが問われることがあります。交通違反については、頻度や内容によっては「素行不良」と評価される可能性があるため、注意が必要です。

申請から許可までどのくらいかかりますか?

一般的には以下の通りです。

  • 永住申請:6か月〜1年程度
  • 帰化申請:8か月〜1年半程度

ただし、書類の不備や審査の混雑状況によって前後します。

子どもも一緒に帰化できますか?

未成年の子どもは親と一緒に帰化申請できます。特に15歳未満の子は本人の署名などは不要で、親が代わりに申請します。子どもの学校成績や出席状況が確認される場合もあります。

まとめ:帰化と永住の要件の共通点と違い

帰化と永住、どちらも日本で安心して暮らすための選択肢です。どちらにも共通する基本要件がある一方、それぞれの制度にしかない審査ポイントもあります。日本で長く暮らしたい、社会の一員として責任ある生活を送りたいと考えるなら、「帰化」は非常に魅力的な選択肢です。

九州・沖縄で帰化や永住を検討されている方は、福岡法務局を中心に福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄に対応している私にぜひご相談ください!

行政書士
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以下では、帰化許可申請に関連する情報をまとめています。是非ご覧ください。

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投稿者プロフィール

国際行政書士 河野尋志
国際行政書士 河野尋志
外国人の社員さん達と一緒に企業の取締役として国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。行政書士業務を始めてからは様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えてサポート致します。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)