ビザの取消しについてビザ専門の行政書士が解説

この記事でわかること

  • 在留資格が取り消される10の法的理由
  • 過去5年間の取消件数の推移と傾向
  • 実際にあった取消事例
  • 国籍・地域別の傾向
  • 取消しにならない「正当な理由」とは
  • 取消手続きの流れと注意点
  • よくある質問(FAQ)
行政書士
河野
(かわの)

私にご相談が多い福岡出入国在留管理局内(福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)でも、「ビザ取消しになるのは、どういう場合なのか?」という問い合わせがあります。出入国在留管理庁の公式情報を基に、以下で回答いたします。

なお、永住権が取消しになる場合については以下のページで解説しています。

「在留資格の取消し」について統計・事例を解説!

【はじめに】在留資格取消しとは何か

■ ビザ(在留資格)の基本的な意味

ビザ(在留資格)とは、日本に中長期間在留(90日を超えて滞在)する外国人に対して、法務大臣が一定の目的に基づく活動または身分・地位に応じて付与する法的地位のことです。例えば、「技術・人文知識・国際業務ビザ」は企業等でホワイトカラー業務を行うことができる在留資格で、「日本人の配偶者等」は日本人の配偶者としての生活を目的とするビザです。

外国人が日本に中長期的に滞在するには、ビザ(在留資格)を保持し、その資格に定められた活動を実際に行う必要があります。

■ ビザ(在留資格)取消しの定義と意義

「ビザ(在留資格)取消し」とは、すでに付与された在留資格を法務大臣が行政処分として無効にする手続きです。主に以下のような目的で設けられています。

  • 虚偽申請や不正な手段によって取得されたビザ(在留資格)の是正
  • 実際の活動内容が在留資格の趣旨と著しく異なる場合の対応
  • ビザ(在留資格)の悪用や不適切な在留の防止

出典:出入国管理及び難民認定法 第22条の4

■ 「ビザの期限切れ」や「不許可」との違い

ビザ(在留資格)取消しは、単にビザの期限が切れる「在留期限切れ」や、申請が不許可になる「許可不相当」とは異なります。以下のような違いがあります。

項目在留資格取消し在留期限切れ在留資格変更・更新の
不許可
性質行政処分(取消命令)滞在期限の自然消滅審査結果による判断
結果即時に資格失効・退去強制手続もあり超過すると不法滞在(オーバーステイ)現在の資格は継続可(期限まで)
対象既に許可された在留資格者在留期限が到来した外国人申請中の在留者
行政書士
河野
(かわの)

ビザ(在留資格)が取消しされた場合は、入国管理局から、30日を上限として出国のために必要な期間が指定され、自ら出国することになります。
もし指定された期間内に日本から出国しなかった場合はオーバーステイとなり、退去強制の対象となるほか、刑事罰の対象となります。

退去強制について詳しくは、以下のページで解説しています。

■ どのような場合に取消し対象になるのか

取消しの対象は、以下のような行為や状況に該当する場合です。

  • 偽装結婚や虚偽の就労契約などでビザ(在留資格)を得た
  • ビザ(在留資格)に基づく活動を正当な理由なく放棄している
  • 「日本人の配偶者等」なのに、実際には別居や離婚状態で配偶者として活動していない

特に「活動実態のない就労」や「留学資格での無就学状態」など、形式上の滞在が継続されているものの、実質的な資格の前提が崩れているケースが多く見られます。

行政書士
河野
(かわの)

このように、「在留資格取消し」は制度としての存在意義が極めて大きく、正しく理解しなければ予期せぬ処分を受けるリスクがあります。

【法的根拠】在留資格が取り消される10の理由とは?

ビザ(在留資格)取消しの法的根拠は、「出入国管理及び難民認定法」第22条の4第1項に規定されています。これは、既に付与されたビザ(在留資格)が不適切な手段によって取得された場合や、その資格に基づく活動が行われていない場合などに適用されるもので、法務大臣が裁量により取消しを行うことができる行政処分です。

以下では、10の取消事由をそれぞれ解説します。出典:出入国在留管理庁「在留資格取消しの制度」

第1号 嘘をついて日本に入国した場合
偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由該当性に関する入国審査官の判断を誤らせて上陸許可の証印等を受けた場合。
第2号 嘘や不正の手段を使って日本に入国した場合
第1号のほか、偽りその他不正の手段により、本邦で行おうとする活動を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(例えば、本邦で単純労働を行おうとする者が「技術」の在留資格に該当する活動を行う旨申告した場合) 又は本邦で行おうとする活動以外の事実を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(例えば、申請人が自身の経歴を偽った場合)。
第3号 わざとでなくても事実でない書類を提出して日本に入国した場合
第1号又は第2号に該当する以外の場合で、虚偽の書類を提出して上陸許可の証印等を受けた場合。本号においては、偽りその他不正の手段によることは要件となっておらず、申請人に故意があることは要しません。
第4号 嘘をついて在留特別許可を受けた場合
偽りその他不正の手段により、在留特別許可を受けた場合。
第5号 在留資格(ビザ)に該当する活動をしていない場合
入管法別表第1の上欄の在留資格(注)をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留している場合(ただし、正当な理由がある場合を除きます。)。
第6号 在留資格(ビザ)に該当する活動を3ヶ月以上していない場合
入管法別表第1の上欄の在留資格(注)をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合(ただし、当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除きます。)。
第7号 配偶者ビザを持つ外国人が配偶者と離婚・死別してから6か月以上、在留資格を変更していない場合
「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留する者(日本人の子及び特別養子を除く。)又は「永住者の配偶者等」の在留資格をもって在留する者(永住者等の子を除く。)が、その配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合(ただし、当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除きます。)。
第8号 新たに日本に入国してから90日以内に住所を届出していない場合
上陸の許可又は在留資格の変更許可等により、新たに中長期在留者となった者が、当該許可を受けてから90日以内に、出入国在留管理庁長官に住居地の届出をしない場合(ただし、届出をしないことにつき正当な理由ある場合を除きます。)。
第9号 引越ししてから90日以内に住所を届出していない場合
中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に届け出た住居地から退去した日から90日以内に、出入国在留管理庁長官に新しい住居地の届出をしない場合(ただし、届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除きます。)。
第10号 嘘の住所を届出した場合
中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に虚偽の住居地を届け出た場合。

補足:取消処分は「裁量行政処分」です

10あるビザ(在留資格)取消し理由のいずれかに該当すれば、すぐにビザ取消しになるわけではなく、「正当な理由があるか」「本人に故意・過失があるか」「活動再開の可能性があるか」などを総合的に判断して、処分が下されます。そのため、事情説明や資料提出の機会(意見提出手続)を通じて、取消し回避の余地も残されています。

【統計】ビザ取消しの推移(令和2年〜6年)

出入国在留管理庁の公開データによると、令和6年における取消件数は1,184件に上り、近年では比較的高水準となっています。出入国在留管理庁が公表している取消理由別の統計データ(令和2年〜令和6年)をもとに、近年の動向を見てみましょう。

取消理由適用件数の推移令和2年令和3年令和4年令和5年令和6年
第1号
嘘をついて入国
12
第2号
不正をして入国
6836284272
旧第3号
第3号
正しくない書類で入国
1134
第4号
嘘で在留特別許可
第5号
ビザ該当活動なし
616253161128303
第6号
ビザ該当活動3ヶ月以上なし
4934969171,049761
第7号
配偶者ビザ6か月以上
13
第8号
入国90日以内に住所を届出なし
第9号
転居90日以内に住所届出なし
第10号
嘘の住所を届出
1,210800,125,241,184
行政書士
河野
(かわの)

注目点

  • 最も多いのは「第6号(ビザ該当活動3ヶ月以上なし」で、全体の約64%を占めています。
  • 次いで「第5号(ビザ該当活動なし)」が全体の約26%と、6号と合わせると実質的な活動を欠いた状態が全体の9割近くを占めています。
  • 虚偽申請に関する「第2号」や「第3号」も依然として一定数存在します。

ビザ(在留資格)取消しの流れ

ビザ(在留資格)取消しの手続きは、出入国在留管理庁が定めた行政手続に従って行われます。単に「違反があったら即取消し」となるわけではなく、事実確認や弁明の機会が設けられたうえで、慎重に処分が決定される仕組みです。以下では、在留資格取消しの流れを解説します。出典:出入国在留管理庁「在留資格取消しの制度」

■ ステップ1:違反事実の把握

概要:地方出入国在留管理局が、取消事由に該当する可能性のある事実を把握します。

主な情報源

  • 市区町村やハローワーク等からの通報
  • 学校・雇用主からの報告
  • 警察や税関など他機関との情報連携
  • 本人による不自然な申請内容

■ ステップ2:本人への出頭要請・事情聴取

概要:出入国在留管理官が本人に出頭を求め、事情の確認や書面での説明を求めます。

実施されること

  • 書類(在留カード、パスポート、出入国記録など)の確認
  • 就労先や学校の在籍確認
  • 活動内容に関する詳細なヒアリング

■ ステップ3:資料提出・意見陳述(弁明機会)

概要:本人に対して、取消しの理由を説明し、それに対する意見や反証資料を提出する機会が与えられます(いわゆる「意見提出手続」)。

期間:原則として指定された期限内

提出可能な資料の例

  • 在学証明書、出勤記録、給与明細
  • 配偶者との同居・生計一体性を示す資料
  • 医師の診断書や調停中であることの証明書

■ ステップ4:取消決定・通知

概要:法務大臣の裁量により、取消処分が正式に決定され、本人に通知されます。

通知方法:原則として書面による交付

取消しが決定されると

  • その時点で在留資格は消滅します
  • 新たな在留資格変更や更新は認められません
  • 必要に応じて退去強制手続へ移行します

■ ステップ5:退去強制手続(該当する場合)

概要:取消しの結果、ビザ(在留資格)を失った状態が続くと、「不法残留(オーバーステイ)」とみなされ、退去強制手続の対象となります。

内容

  • 仮放免の可否検討
  • 本国への送還準備
  • 拘束を伴う手続となることもある

■ 全体図(フロー)

在留資格が取り消しになる流れをビザ専門の行政書士が解説

【実例】令和6年に実際に起きたビザ取消事例

出入国在留管理庁が公表した資料によると、令和6年(2024年)には1,184件の在留資格取消しが実施されました。中でも多く見られたのは、活動実態の欠如虚偽申請に関連する事例です。以下では、出入国在留管理庁が公表している令和6年の代表的な取消事例を解説します。

令和6年におけるビザ取消の具体事例一覧

取消理由の概要具体的事例
上陸拒否事由に該当しないものと偽り、上陸許可を受けたこと上陸申請時、規制薬物等を所持していない旨申告し、上陸拒否事由に該当しない旨偽って上陸許可を受けたが、その後、税関において覚醒剤を所持していたことが判明した。
偽りその他不正の手段により、上陸許可等を受けたこと在留資格「日本人の配偶者等」を得るため、日本人との婚姻を偽装し、日本人配偶者との婚姻実態があるかのように装う内容虚偽の在留期間更新許可申請書を提出して同許可を受けた。
不実の記載のある文書又は図画の提出又は提示により、上陸許可等を受けたこと在留資格「技能」に係る在留期間更新許可申請に際し、稼働実態のない雇用先を記載した不実の記載のある在留期間更新許可申請書を提出して同許可を受けた。
正当な理由なく在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること【事例1】在留資格「留学」をもって在留する者が、学校を除籍された後、当該在留資格に応じた活動を行うことなくアルバイトを行って在留していた。

【事例2】在留資格「技能実習」をもって在留する者が、実習先から失踪し、当該在留資格に応じた活動を行うことなく他の会社で稼働して在留していた。
正当な理由なく在留資格に応じた活動を3月(高度専門職2号は6月)以上行わないで在留していること【事例1】在留資格「技能実習」をもって在留する者が、実習先から失踪し、当該在留資格に応じた活動を行うことなく3か月以上本邦に在留していた。

【事例2】在留資格「留学」をもって在留する者が、学校を除籍された後、当該在留資格に応じた活動を行うことなく3か月以上本邦に在留していた。
「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格を有する者が、正当な理由なく在留資格に応じた活動を6月以上行わないで在留していること在留資格「永住者の配偶者等」をもって在留している者が、同国人配偶者と離婚した後も引き続き、6か月以上本邦に在留していた。
偽りその他不正の手段により、上陸許可等を受けたこと同国人との婚姻継続中に日本人と婚姻し、在留資格「日本人の配偶者等」をもって在留していた者が、重婚状態が継続しているにもかかわらず、重婚の事実を秘匿して永住許可申請をし、同許可を受けた。

■ 総括:事例に共通する注意点

共通点解説
実態と異なる申請があるビザ申請書の内容と、実際の生活や就労内容に違いがある場合、特に注意が必要です
活動の空白期間がある資格に応じた活動を行っていない場合、理由と証明書類の提出が不可欠です
届出・変更申請をしていない婚姻の解消や学校の除籍等は速やかに申告すべきです
行政書士
河野
(かわの)

これらの事例は、取消処分の対象となる行為が多岐にわたることを示しており、外国人本人だけでなく、企業や支援者にとっても日常的な注意と適切な対応が求められます。

【国別データ】どの国籍のビザ取消しが多いのか?

令和6年(2024年)に行われた在留資格取消し件数(合計1,184件)を国籍・地域別に集計すると、以下のような分布になりました。出典:出入国在留管理庁

国籍・地域別の在留資格取消しを行った在留資格(令和6年)

国籍/地域経営・管理技術・人文知識・国際業務企業内転勤介護技能特定技能1号技能実習1号ロ技能実習2号ロ技能実習3号ロ短期滞在留学家族滞在特定活動永住者日本人の配偶者等永住者の配偶者等定住者
ベトナム171012938722212784
中国12292812109
ネパール13122360
インドネシア132949
カンボジア2833
スリランカ121033
ウズベキスタン2532
その他1213261084
6913161884913131211211184

■ 突出するベトナムの取消件数の背景

  • 全取消件数の約66%を占める圧倒的多数。技能実習や特定技能制度の急拡大に伴い、制度上のミスマッチや失踪などが増加したと推察されます。
  • ベトナムからの技能実習・留学生は統計上も増加の一途であり、それに伴う管理上の課題が浮き彫りになっています。

■ 資格別の背景を国別にみると

  1. ベトナム
    • 特に「技能実習」「留学」「特定技能」での取消が多く、失踪・活動なし(第5号)の事例が懸念されます。
  2. 中国
    • 婚姻資格(配偶者ビザ)での虚偽申請や偽装結婚、ウソの記載による取消が目立ちます。
  3. ネパール/インドネシア
    • 技能実習制度の利用が多く、離脱や無活動による取消が中心です。
  4. カンボジア・スリランカ・ウズベキスタン
    • 特定技能や留学での無活動・不正就労の問題も一定数存在します。

■ なぜ特定国で取消しが多いのか?

取り扱い件数が多い国では、次のような事情が複合的に絡んでいると考えられます。

  • 制度適用の急増:特定技能や技能実習の対象国としてベトナム等が優先。人数増で管理が追いつかず無活動や失踪者が増加。
  • 企業側管理体制の不備:フォローアップや活動確認が不十分で、制度が形骸化。
  • 情報提供不足:滞在者に制度内容や権利義務の不利益が十分周知されていないことも一因。

■ まとめ

令和6年度の取消事例から見えるのは、制度の急速な拡大に伴って管理が追いつかず、不規則な活動や不正取得に対する行政処分が増えていることです。特に技能実習・特定技能・留学資格において、失踪や無活動状態が顕著であるため、支援機関や受入組織の役割が今まで以上に重要になっています

【重要】取消されない「正当な理由」とは?

在留資格取消しは一律ではなく、以下のような「正当な理由」がある場合には取消しされません。

配偶者ビザが取消しにならない具体例

  • 配偶者からの暴力(いわゆるDVを理由として )一時的に避難又は保護を必要としている場合
  • 子供の養育等やむを得ない事情のために配偶者と別居して生活している場合
  • 本国の親族の傷病等の理由により、再入国許可(みなし再入国許可を含む )による長期間の出国をしている場合
  • 離婚調停又は離婚訴訟中の場合

出典:出入国在留管理庁/配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由

住所の届出をしなかったがビザ取消しにならない具体例

  • 勤めていた会社の急な倒産やいわゆる派遣切り等により住居を失い、経済的困窮等によって新たな住居地を定めていない場合
  • 配偶者からの暴力(いわゆるDVを理由として )避難又は保護を必要としている場合
  • 病気治療のため医療機関に入院している等,医療上のやむを得ない事情が認められ、本人に代わって届出を行うべき者がいない場合
  • 転居後に、急な出張により再入国出国した場合等再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による出国中である場合
  • 頻繁な出張を繰り返して、1回当たりの本邦滞在期間が短いなど,在留活動の性質上住居地の設定をしていない場合

出典:出入国在留管理庁/住居地の届出を行わないことに正当な理由

よくある質問(FAQ)

在留資格が取消されたら、即退去しなければなりませんか?

原則として、ビザ(在留資格)の取消処分が下された時点でビザは失効しますが、「退去強制手続き」が別途開始されます。処分の通知を受けた後に異議申立てや弁明の機会がある場合もあり、すぐに出国を命じられるとは限りません。ただし、そのまま在留し続けると「不法残留(オーバーステイ)」となる恐れがあるため、早急にご自身で対応するか、専門家に相談することをおすすめします。

取消処分に異議を申し立てることはできますか?

取消処分に対しては、行政不服審査法や行政事件訴訟法に基づく異議申立て・取消訴訟を行うことが可能です。ただし、異議申立てを行っても処分の効力は一旦生じるため、仮の救済(執行停止)を求める必要があるケースもあります。手続は専門性が高いため、専門家にサポートを依頼するとよいでしょう。

「正当な理由」とはどのようなものですか?

正当な理由とは、やむを得ない事情でビザ(在留資格)に基づく活動が行うことができなかった場合のことです。例としては、DV被害による別居、入院・傷病、離婚調停中、実習先の倒産などです。診断書や調停記録など、客観的資料の提出が重要です。

取消しを防ぐためにはどうすればよいですか?

以下のような基本行動を守ることで取消リスクを低減できます:

  • ビザ(在留資格)に応じた活動を継続的に行う
  • 活動状況に変化があれば速やかに届出・相談する
  • 書類は正確かつ事実に基づいて作成・提出する
  • 在留カードや住居地の情報は常に最新の状態に保つ

雇用主が虚偽の契約書を作った場合も、自分が責任を問われますか?

本人がその虚偽の内容を知っていた、あるいは疑いながら分からないふりをしていた場合には、共犯的な扱いとなる可能性があります。「知らなかった」と主張するには、十分な証明が必要です。雇用先の実態や契約内容を事前に確認し、証拠を残すことが重要です。

ビザの取消しは過去の事実にも適用されますか?

取消処分は「過去にさかのぼって不正に在留資格を取得していた」と認定される場合は、既に持っているビザ(在留資格)でもさかのぼって無効になります。そのため、過去の偽装行為や虚偽申請が後日発覚した場合も、取消対象となります。

離婚後すぐに「定住者」への変更申請を出せば、取消を避けられますか?

状況によります。「永住者の配偶者等」や「日本人の配偶者等」の資格保持者が離婚した場合は、原則として資格の前提がなくなるため、速やかに変更申請を行う必要があります。ただし、離婚の事情や本人の日本との関係性により、許可・不許可の判断が分かれるため、事前の準備と理由説明が不可欠です。

配偶者ビザで離婚した場合について詳しくは、以下のページで解説しています。

活動をしばらくしていませんでしたが、再開すれば取消は避けられますか?

「正当な理由」があり、かつ活動を再開している場合は、取消されない可能性もあります。ただし、過去の活動中断期間の理由や再開の証明が必要です(在籍証明、出勤簿など)。事前に入国管理局へ報告することが望ましいです。

取消処分歴は、将来の入国審査に影響しますか?

取消歴は出入国記録に残りますので、将来のビザ申請や入国審査で不利になります。特に不正な手段やウソの申請による取消しは、5年またはそれ以上の再入国制限が課されることがあります。

入国管理局の取消手続の途中で出国したら、取消しは無効になりますか?

ビザ(在留資格)取消しは「在留資格そのもの」に対する行政処分であるため、本人が出国しても処分自体は有効に行われます。また、虚偽や不正の事実が明らかであれば、将来の再入国申請にも影響を及ぼします。

【まとめ】ビザ取消しを防ぐには?

ビザ(在留資格)取消しは、外国人本人や家族にとって重大な処分であるだけでなく、受入企業や教育機関、行政書士などの支援者にとっても信頼と責任が問われる問題です。取消しのリスクを回避するには、以下の4つの基本原則に基づいた対応が不可欠です。

■ 原則1:ビザ(在留資格)に応じた「実態ある活動」を行うこと

在留資格は「許可された活動を行う」ことを前提に付与されています。そのため、次の点を守ることが重要です。

  • 就労ビザであれば、契約企業での実務に継続的に従事すること
  • 留学ビザであれば、学校への継続的な在籍と出席
  • 配偶者ビザであれば、実質的な婚姻生活の継続
行政書士
河野
(かわの)

中断や変更があった場合は、必ず入国管理局に相談または変更申請を行うことが基本です。

■ 原則2:「虚偽・不正」のない申請を徹底する

ビザ(在留資格)の取消しでは、ウソの内容や不正な手段による申請が最も重視されます。以下の点に特に注意しましょう。

  • 偽装結婚・虚偽雇用などは絶対に避ける
  • 申請書・添付書類は事実に基づき正確に作成
  • 不明な点や疑義がある場合は専門家に相談する
行政書士
河野
(かわの)

たとえ本人に悪意がなくても、書類の不実記載はビザ取消し対象となります。

■ 原則3:活動履歴・証明を「日常的に」記録・保管しておく

万が一、ビザ取消し手続きの対象となった場合、自分の正当性を主張するために証拠が必要です。以下の資料を日常的に保管しておくことをおすすめします。

在留資格保管すべき主な書類
就労系(技術・技能等)出勤簿、給与明細、雇用契約書、業務報告書など
留学在籍証明書、成績証明書、出席記録など
配偶者等同居証明、生活費の共有記録、写真、連絡履歴など

■ 原則4:「変更・異常」があったらすぐ届出・相談する

  • 転職、退職、除籍、離婚などの重要な変化が生じた際には、2週間以内に入国管理局へ届け出を行うことが義務です。
  • 特に、ビザ(在留資格)の前提が変わるような場合(配偶者資格での離婚など)は、できるだけ早く「資格変更申請」を行わないと取消対象となります。

■ 実務担当者・支援者ができること

担当者取るべき行動
行政書士・弁護士事前相談・書類作成支援、取消処分への対応助言
企業担当者在留資格の範囲内での適正な雇用、活動記録の整備
学校職員出席・成績不振者への警告、適正な除籍処理と報告
支援団体生活相談、母語対応、制度の説明と啓発活動

■ 最後に

ビザ取消しは、人生の転機となる重大な処分です。しかし、その多くは日常的な注意や適切な相談によって未然に防ぐことができます。

  • 「うっかり」や「何もしないで放置すること」が一番危険です。
  • 迷ったときは一人で判断せず、専門家や関係機関にすぐ相談しましょう。

適正な在留を継続するためには、「正しい知識」と「早めの行動」が最大の防衛策です。本記事が、その一助となれば幸いです。

国際行政書士
河野(かわの)

今回の解説は以上です。弊所ではビザ申請を丁寧に!早く!手続き致します。ご不明点があればお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料! 福岡を中心に、九州、全国対応が可能で、オンライン(ZOOM、LINE、WeChat、Teamsなど)での面談も対応しております。

ビザ申請サポート福岡 外国人支援センター

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投稿者プロフィール

国際行政書士 河野尋志
国際行政書士 河野尋志
外国人の社員さん達と一緒に企業の取締役として国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。行政書士業務を始めてからは様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えてサポート致します。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)