入国前結核スクリーニングについてビザ専門の行政書士が解説

はじめに:この記事でわかること

このブログでは、以下の点について速報します。

  • なぜ「入国前結核スクリーニング」が必要なのか
  • 対象となる国と対象者
  • 「結核非発病証明書」とは何か
  • 指定健診医療機関の確認方法
  • 行政書士に相談するメリット
行政書士
河野
(かわの)

入国前結核スクリーニングの情報が公開されてから、私が対応することが多い福岡出入国在留管理局管内(福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)のお客様からも、問い合わせが増えています。

ご不明点あれば何なりとお尋ねください。なお、この記事の情報は、以下の公式サイトなどから情報収集して、できるだけ分かりやすくまとめたものです。

入国前結核スクリーニングの開始予定について

入国前結核スクリーニングの対象国・証明書・開始時期など

入国前結核スクリーニングとは?

「結核」は依然として日本国内で毎年約10,000人が発症し、毎年約1,500人が死亡している深刻な感染症です。外国生まれの患者の割合が増加傾向にあることから、2025年(令和7年)6月23日から「入国前結核スクリーニング」が導入されます。

対象国生まれの結核患者数(2023年)

国名日本における患者数出生国割合
フィリピン317人19.6%
ベトナム272人16.8%
インドネシア231人14.3%
ネパール229人14.1%
ミャンマー155人9.6%
中国148人9.1%

上記の状況を受けて、特定の国から来日する中長期在留予定者に対し、日本入国前に「結核にかかっていない」ことを証明する書類の提出を義務付ける制度が「入国前結核スクリーニング」です。

行政書士
河野
(かわの)

申請人(日本に中長期で滞在する予定の外国人の方)は、母国にある、日本政府が指定する健診医療機関で「結核検査」を受け、「結核にかかっていないこと」を証明する書類(結核非発病証明書)を取得する必要があります。この証明書は、在留資格「認定証明書」交付申請時や、ビザ(VISA、査証)申請時に提出することが求められます。提出できない場合、在留資格(ビザ)が交付されない、または、ビザ(VISA、査証)が発給されない、ということになります。

いつから開始? 誰が対象になる?

✅ いつから開始されるのか?

入国前結核スクリーニングの実施に関するガイドライン(令和7年3月31日)によると、以下のように。対象国の中で準備が整った国から順次開始されます。

国・地域健診受付の開始日結核非発病証明書の
提出義務開始日
フィリピン・ネパール2025年3月24日2025年6月23日
ベトナム2025年5月26日2025年9月1日
インドネシア・ミャンマー・中国開始に向け調整中開始に向け調整中 (決定し次第公表)

※日付は「予定」です、変更される可能性があります。

🧭 誰が対象になるのか?

対象国の国籍を持つ外国人の方

以下の6つの国の国籍を有する方です:

  • フィリピン
  • ベトナム
  • ネパール
  • インドネシア(開始に向け調整中)
  • ミャンマー(開始に向け調整中)
  • 中国(開始に向け調整中)

対象となる在留資格

  • 中長期在留者として入国・在留する外国人の方。つまり、通常の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)・配偶者ビザ家族滞在ビザ留学ビザなどで来日する外国人の方は対象となります。
  • 特定活動(告示第53号・54号)に該当する、デジタルノマドおよびその配偶者・子なども対象
(当面の間は)対象“外となる在留資格(ビザ)など

以下の場合は当面の間、対象から除外されます:

  • 短期滞在ビザなど日本在留が3か月以下のもの
  • 「みなし再入国許可」「再入国許可」を得て日本を出国した外国人の方
  • 特定技能外国人
  • 外交・公用ビザ
  • 特定活動告示第55号(特定自動車運送業準備)
  • 家事支援外国人材受入事業
  • JETプログラム参加者
  • JICA研修員(長期・短期)
  • JICA人材育成奨学計画(JDS)留学生
  • 大使館推薦による国費留学生
  • EPAに基づく看護師・介護福祉士
  • 居住国の滞在許可証等により、現在の居住地が対象国以外の国又は地域であることが確認された場合は、現在の居住地における居住期間を問わず対象外

など

「結核非発病証明書」とは?

「結核非発病証明書」とは、日本入国前に、日本政府が指定する健診医療機関で受けたスクリーニングを通じて、「活動性結核にかかっていない」と判断された外国人に発行される公式な証明書です。これは、日本の入国・在留審査において重要な健康に関する資料となります。

🏥 発行される流れ

  1. 指定医療機関での健診
     問診・身体検査・胸部X線撮影が行われ、所見によっては追加で喀痰検査(3日間連続で実施のスクリーニング検査)も行います。
  2. 結核非発病と判断されると発行
     医師による総合診断の結果、結核の発病がないと判断されると発行されます。

📆 有効期間と注意点

  • 原則180日間有効
     胸部X線撮影日から180日間有効で、その期間内なら提出が可能です。
  • 例外:90日に短縮される場合も
     同居家族に結核患者がいたり密接接触が疑われる場合、健診期間は90日と短縮されることがあります。

🧭 申請時の重要ポイント

  • 本人確認必須:健診時にはパスポートの提示が求められます。
  • 医療費は自己負担:検査費用と証明書発行費用は申請者の負担です。
  • 発行までの時間に余裕を持ちましょう:診療機関により所要日数が異なるため、来日前には余裕を持って予約・受診しましょう

🔍 審査方法と提出するタイミングは?

「入国前結核スクリーニング」において、結核非発病証明書の提出が必要となる場面は大きく分けて2つあります。それぞれのタイミングと審査の流れを整理して解説します。

① 在留資格「認定証明書(COE)」交付申請をする時

最も基本的な提出のタイミングは、在留資格認定証明書(COE)交付申請の時です。以下のような流れで審査されます。

【流れ】

  1. 申請人(外国人)が結核スクリーニング対象者であるかを確認
  2. 指定健診医療機関で健診を受け、結核非発病証明書を取得
  3. 申請書類一式とともに、結核非発病証明書を添付して入国管理局へ提出
  4. 証明書の有効性や真偽も審査の対象となり、疑義がある場合は追加資料が求められる場合があります

【ポイント】

  • 在留資格「認定証明書(COE)」を申請する段階で提出すれば、VISA(査証)申請時に再提出不要
  • 証明書の有効期間はX線撮影日から180日(または90日)であり、在留資格「認定証明書(COE)」を申請する時点で有効であればOK

② (例外)査証(ビザ)申請する時

もし、在留資格認定証明書(COE)交付申請時に結核非発病証明書を提出できなかった場合、次の段階である在外公館(日本大使館・領事館)でのVISA(査証)申請時に証明書の提出が求められます。

行政書士
河野
(かわの)

在留資格「認定証明書」交付申請する時に「結核非発病証明書」を提出するのが基本です。提出しない場合は、不交付(不許可)になるのが原則です。
「認定証明書」交付申請する時に、「結核非発病証明書」を提出できない「やむを得ない事情」がある場合に限り、VISA(査証)申請する時に、「結核非発病証明書」が提出できる場合があります。ただし、VISA(査証)が発給される保証はありません。

✅ 行政書士からのアドバイス

  • COE申請時に証明書を提出しましょう!:その後のVISA(査証)申請がスムーズになり、余計な手間と時間を削減できます。
  • 証明書の有効期限管理が重要:180日(または90日)という期間内にすべての手続きを終えるスケジュール設計が求められます。
  • 原本・コピーを保存:念のため、原本とスキャンデータを保存しておきましょう。
行政書士
河野
(かわの)

配偶者ビザなど海外から外国人を呼び寄せる認定証明書交付申請」の許可率は約90%です。申請すれば必ず許可(交付)されるわけではなく、10人に1人は不許可(不交付)になります。

「結核非発病証明書」など必要書類を完璧に揃えないと不安は消えません。もし不明点があればお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料、オンラインでの面談にも対応しています。

指定健診医療機関を確認する方法

指定医療機関は、厚生労働省「日本入国前結核健診の手引き」に基づき認定されます。最新情報は、以下の厚生労働省関連ページから確認できます。

👉 JPETS公式サイト(厚労省)

よくある質問(FAQ)

入国前結核スクリーニング(JPETS)Q&Aから一部引用します。

在留資格「認定証明書」交付申請や、VISA(査証)申請を行う場合は、結核非発病証明書の「原本」を提出する必要がありますか?

写し(スキャンデータを含む。)での提出が可能です。

インドネシア、ミャンマー、中国の開始時期は?

この3か国については、現在調整を行っているところで、開始時期は未定。開始の目途が立ち次第、厚労省ホームページにおいてお知らせする予定です。

結核非発病証明書の有効期限は?

胸部レントゲン撮影の実施日より「180日」間有効です。
申請者が活動性結核ではないと判断された場合において、次の条件に合致する者に発行される結核非発病証明書の有効期間は、180日ではなく90日間となります。
● 申請者と同居している家族内に、胸部レントゲン撮影日から遡って2か月以内に感染性の活動性肺結核と診断された者がいる場合
● 胸部レントゲン撮影日から2か月以内に感染性の活動性肺結核と診断された者と、住居、密閉された同じ空間、またはその他の囲まれた環境を長期間(数日間以上)共有していた者

在留資格「認定証明書」交付申請、又は、VISA(査証)申請で、指定健診医療機関「以外」の医療機関が発行する結核非発病証明書を提出することは認められますか?

認められません。

過去に結核と診断されたことがある場合、日本に入国できますか?

過去に結核と診断されている場合であっても、結核の治療が完了しており、現在結核を発病していないことが指定健診医療機関において確認された場合は、結核非発病証明書が発行され、在留資格認定証明書交付申請、査証申請を行うことができます。

入国前結核スクリーニングを受けて、「陽性」と診断された場合はどうなりますか?

医師の指示に従って、医療機関で治療を受けてください。治療が完了すれば、再度指定健診医療機関においてスクリーニングを受けることができます。その際、「結核治療終了報告書」(※)が必要になります。
※ 結核治療終了報告書には所定の様式があります。分からないことがあれば、受診した指定健診医療機関に確認してください。

健診費用は誰が負担しますか?

申請者(外国人本人)が負担します。

健診費用はいくらかかりますか?

指定健診医療機関により異なります。健診に関わる料金は、指定健診医療機関の窓口やウェブサイト等を確認してください。

子どもは入国前結核スクリーニングの対象になりますか?

対象になります。5歳未満の小児においては、問診・身体検査で活動性結核を疑う所見がある場合に、成人同様に胸部レントゲン検査が行われます。問診・身体検査で活動性結核を疑う所見がない場合には、ツベルクリン反応検査(TST)またはインターフェロンγ遊離試験(IGRA)が実施されます。

妊婦は入国前結核スクリーニングの対象となりますか?

対象となります。ただし、妊娠中、特に妊娠初期における胸部レントゲン撮影の胎児への影響は小さいものの、一定のリスクが伴います。したがって、以下の2つの代替の選択肢をご自身の責任で検討してください。
① 出産後まで健診を延期する。
② プロテクターを装着しての胸部レントゲン撮影を行う。

結核非発病証明書の有効期限は「認定証明書の申請まで有効」であればいいですか?

「認定証明書の申請まで有効」であればOKです。その後、VISA(査証)申請、日本の空港での上陸申請では有効期限が過ぎていてもOKです。

「認定証明書」交付申請の時に、結核非発病証明書の提出がなくても、認定証明書が交付されるのですか?

原則として、在留資格認定証明書交付申請時に結核非発病証明書を提出しないものについては、不交付処分となります。在留資格認定証明書交付申請時に結核非発病証明書を提出できないことに「やむを得ない事情」が認められ、かつ、査証申請時には結核非発病証明書の提出が見込まれるものに限っては、例外的に結核非発病証明書の提出がない場合であっても、 在留資格認定証明書を交付するケースが発生し得ることを想定したものであり、これに該当するか否かは個別に判断することとなります。

まとめ:行政書士に相談するメリット

  • 最新の制度情報をもとに、正確な申請サポートを受けられる
  • 指定医療機関の選定やスケジュール調整のアドバイスが受けられる
  • 在留資格「認定証明書(COE)」の申請とあわせてワンストップで対応可能

「入国前結核スクリーニング」は、特定国から日本に中長期在留を希望する方にとって、新たに加わった重要な要件です。書類の不備や手続きミスがあると入国ができないリスクもあります。

もともと、在留資格認定証明書(COE)の許可率は約90%で、10人に1人は不交付(不許可)になってしまう申請なので、「入国前結核スクリーニング」の制度を知らずに申請してしまうと、更に不許可の可能性が高まってしまいます。

制度の開始初期は混乱も予想されます。不安がある方は、行政書士である私にぜひご相談ください。

国際行政書士
河野(かわの)

今回の解説は以上です。弊所ではビザ申請を丁寧に!早く!手続き致します。ご不明点があればお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料!

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投稿者プロフィール

国際行政書士 河野尋志
国際行政書士 河野尋志
外国人の社員さん達と一緒に企業の取締役として国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。行政書士業務を始めてからは様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えてサポート致します。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)