【ホテルや旅館で就労する外国人篇】技術・人文知識・国際業務の許可・不許可事例|福岡の行政書士が解説

ホテル旅館で就労する外国人の技術・人文知識・国際業務

 在留資格(ビザ)の審査を行い、許可・不許可の決定をするのは出入国在留管理庁の審査官さん(法律上は法務大臣ですが、実務上は審査官さん)だけなので、彼らの事例から学ぶのが最も実践的です。事例は、詳細は以下ホームページからご確認いただけます。

https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html

 今回の記事では【ホテルや旅館で就労する外国人篇】と題して、技術・人文知識・国際業務ビザの許可7事例、不許可6事例を取り上げます。

【ホテルや旅館で就労する外国人篇】技術・人文知識・国際業務の許可・不許可事例(入国管理局発表)の解説【最新版】

ホテル・旅館での就労が「許可」された事例

【ホテル・旅館での就労の許可事例 01】

公開された事例引用

本国(外国)において大学の観光学科を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき、月額約22万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務等に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、申請者が学んだ知識と業務内容が密接に関連していることが求められます。本事例では、申請者が観光学を専攻し、ホテル業務に関連する知識を修得しているため、業務内容と学歴の関連性が認められました。また、ホテルのフロント業務や外国人観光客向けの施設案内業務は、高度な外国語能力と観光業に関する知識を必要とする業務であり、単なる接客業務ではなく、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務と認められたと考えられます。

【ホテル・旅館での就労の許可事例 02】

公開された事例引用

本国(外国)において大学を卒業した者が、本国からの観光客が多く利用する本邦の旅館との契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務、従業員に対する外国語指導の業務等に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、申請者が学んだ知識と業務内容が密接に関連していることが求められます。本事例では、申請者が大学で学んだ内容をもとに、観光業界での翻訳・通訳業務に従事することが明確であったのだと思われます。また、単なる通訳業務にとどまらず、外国語指導などの教育的な業務にも従事するため、専門的な知識を活かす業務であることが明確だったことも許可された要因だと考えられます。

【ホテル・旅館での就労の許可事例 03】

公開された事例引用

本邦(日本)において経済学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の空港に隣接するホテルとの契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

本事例では、経済学を専攻した申請者が、マーケティングリサーチや広報業務という経済・ビジネス分野の知識を活かす業務に従事するため、学歴との関連性が明確であると認められました。また、本業務には外国人観光客向けの情報発信やホームページ作成が含まれるため、翻訳・通訳業務の要素も含まれており、単なる接客業務ではなく、高度な知識やスキルを要する業務であると判断されたと考えられます。

【ホテル・旅館での就労の許可事例 04】

公開された事例引用

本邦(日本)において経営学を専攻して大学を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する本邦のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て,月額約30万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

申請者は、総合職(幹部候補生)として採用されており、座学研修(2か月)と実務研修(4か月)を経た後に、企画・管理業務を含む職務に就くことが予定されていることがポイントです。在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、採用された者が職務遂行に必要な知識やスキルを習得するための研修は許容されますが、単なる現場作業や単純労働が主目的の研修は認められません。本件では、研修期間(合計6か月)が座学を含むものであり、最終的にフロント業務や宿泊プランの企画・管理といった高度な業務に従事することが明確であったため、適正な研修内容と判断されました。

もし、接客研修が長期間にわたり、単なるフロント業務やレストランの接客のみが主な業務であれば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない単純労働とみなされ、不許可となる可能性がありました

【ホテル・旅館での就労の許可事例 05】

公開された事例引用

本邦(日本)の専門学校において日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し、専門士の称号を付与された者が、外国人観光客が多く利用する本邦の旅館において月額約20万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた案内、外国語版ホームペ-ジの作成、館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

本事例では、翻訳・通訳の専門教育を受けた申請者が、外国語を活かした案内業務や翻訳業務に従事するため、適正な学歴要件を満たしていると判断されました。また、外国語版ホームページの作成や館内案内の多言語対応の翻訳は、高度な語学スキルと翻訳技術を必要とする業務であり、単なる接客業務ではなく、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する業務であると認められたと考えられます。

【ホテル・旅館での就労の許可事例 06】

公開された事例引用

本邦(日本)の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士の称号を付与された者が、宿泊客の多くを外国人が占めているホテルにおいて、修得した知識を活かしてのフロント業務や、宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

本事例では、ホテル業務に関連する専門教育を受けた申請者が、外国人宿泊客向けのフロント業務や宿泊プランの企画立案業務に従事するため、適正な学歴要件を満たしていると判断されました。また、宿泊プランの企画立案は、単なる接客業務ではなくホテルの経営戦略に関わる業務であり、ビジネス実務の知識が必要とされる業務です。さらに、フロント業務においても、外国語対応や異文化理解が求められるため、専門学校での学習内容と関連性があると認められたと考えられます。

【ホテル・旅館での就労の許可事例 07】

公開された事例引用

海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が、国際的に知名度の高い本邦のホテルとの契約に基づき、月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン、宣伝・広報に係る業務に従事するもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

本事例では、申請者が10年間にわたり海外のホテル・レストランでマネジメント業務に従事していたため、レストランのコンセプトデザインや宣伝・広報業務に必要な高度な知識と実務経験を有していることが明確であると判断されました。さらに、国際的に知名度の高いホテルでの業務であり、申請者の専門性を活かせる環境であること、また月額60万円の報酬が支払われることから、業務の専門性と安定性が確認できるため、在留資格の許可要件を満たしていると認められたと考えられます。

ホテル・旅館での就労が「不許可」になった事例

【ホテル・旅館での就労の不許可事例 01】

公開された事例引用

本国(外国)で経済学を専攻して大学を卒業した者が、本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、 従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ、主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり、 「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、高度な専門知識や技術を要する業務に従事する場合に認められます。しかし、本事例では、宿泊客の荷物の運搬や客室の清掃といった業務は、専門的な知識を必要としない単純労働に該当するため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では認められませんでした

【ホテル・旅館での就労の不許可事例 02】

公開された事例引用

本国(外国)で日本語学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の旅館において、外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが、当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

通訳業務の実態が不十分
旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語と申請者の母国語が異なっているため、申請者の通訳業務が継続的に発生するとは認められませんでした

業務量が不足している
通訳業務を主とする在留資格申請において、実際の業務量が少なければ、業務としての成立性が低いと判断されるため、不許可となりました。

【ホテル・旅館での就労の不許可事例 03】

公開された事例引用

本邦(日本)で商学を専攻して大学を卒業した者が、新規に設立された本邦のホテルに採用されるとして申請があったが、従事しようとする業務の内容が、駐車誘導、レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから、 「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

駐車誘導、料理の配膳・片付けは、専門知識を必要としない単純労働
これらの業務は、学歴に基づく知識を活かすものではなく、特別な訓練や高度なスキルを必要としない業務であるため、「技術・人文知識・国際業務」の範囲には該当しません

商学の知識を活かす業務ではない
商学の知識を活かす業務としては、ホテルの経営戦略、マーケティング、宿泊プランの企画・管理、財務管理などが該当します。しかし、本件の業務内容は、ホテル運営の基幹業務には直接関与しない単純作業であるため、学歴との関連性が認められませんでした

【ホテル・旅館での就労の不許可事例 04】

公開された事例引用

本邦(日本)で法学を専攻して大学を卒業した者が、本邦の旅館との契約に基づき月額約15万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが、 申請人と同時期に採用され、同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額約20万円であることが判明し、額が異なることについて合理的な理由も認められなかったことから、報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

在留資格の審査において、日本人と外国人の給与格差がある場合、それが合理的な理由(経験年数、業務内容の違いなど)に基づくものである必要があります。しかし、本事例では、申請人と日本人従業員が同じ業務に従事しているにもかかわらず、申請人の給与が低く、その理由が説明されなかったため、不許可となりました

もし申請者の報酬が日本人と同等の20万円以上であれば、在留資格が許可される可能性があったと考えられます。また、給与格差の理由が、例えば業務範囲の違い、試用期間中の待遇差、勤務時間の違いなど、合理的に説明できるものであれば、許可の可能性があったと考えられます。

【ホテル・旅館での就労の不許可事例 05】

公開された事例引用

本邦(日本)の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し、専門士の称号を付与された者が、本邦の旅館との契約に基づき、フロントでの受付業務を行うとして申請があったが、専門学校における専攻科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

服飾デザインの知識がフロント業務には活かされない
フロント業務には、ホテル・観光業の知識や語学スキル、接客マナーが求められますが、服飾デザインの専門知識とは無関係な業務であるため、学歴と業務内容の関連性が認められませんでした

申請者の学歴に基づく専門性が活かされない業務である
もし申請者がアパレル業界でのデザインやマーケティング、商品企画に従事する場合は、学歴との関連性が認められる可能性があります。しかし、本件では旅館のフロント業務であり、申請者の専門知識を活かせる環境ではないため、不許可となりました

【ホテル・旅館での就労の不許可事例 06】

公開された事例引用

本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与された者が、本邦のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】

在留期間の大半が「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務
採用後の最初の2年間は、フロント業務ではなく、レストランでの配膳や客室清掃に従事することが予定されていました。これらの業務は、特別な専門知識を必要とせず、単純労働に該当するため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では認められません

今回の解説は以上です。ビザ申請サポート福岡 外国人支援センター(国際行政書士 河野尋志)ではビザ申請を丁寧に!早く!手続き致します。ご不明点があればお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料! 福岡を中心に、九州、全国対応が可能で、オンライン(ZOOM、LINE、WeChat、Teamsなど)での面談も対応しております。

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国際行政書士 河野尋志

投稿者プロフィール 【行政書士 and 事業サポート 河野尋志】
企業の取締役として外国人の社員さんと一緒に国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。また行政書士業務を始めてからは、様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えて調整できます。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:宮崎県出身、48歳、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)