【日本の専門学校を卒業して「翻訳・通訳」の業務で就労した留学生篇】技術・人文知識・国際業務の許可・不許可事例|福岡の行政書士が解説

在留資格(ビザ)の審査を行い、許可・不許可の決定をするのは出入国在留管理庁の審査官さん(法律上は法務大臣ですが、実務上は審査官さん)だけなので、彼らの事例から学ぶのが最も実践的です。事例は、詳細は以下ホームページからご確認いただけます。
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
今回の記事では【日本の専門学校を卒業した留学生】のうち技術・人文知識・国際業務ビザの中で「翻訳・通訳業務」に特化して、許可3事例、不許可6事例だけを取り上げます。
一言で書くと、専門学校卒の留学生が翻訳・通訳業務で就労するのは簡単ではありません。専門学校で「日本語を学ぶ科目を受講した」というだけではビザが許可されないのが実情です。入国管理局さんは以下のように基準を公表しています。
出入国在留管理庁が公表している「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」という資料に記載のある「学歴と業務との関連性について」の記述引用
専修学校における専攻との関連性としては、履修科目に「日本語」に関連する科目が相当数含まれている場合であっても、留学生が専門分野の科目を履修するために必要な専門用語を修得するための履修である場合や、日本語の会話、読解、聴解、漢字等、日本語の基礎能力を向上させるレベルに留まるもの、同一の専門課程において、日本人学生については免除されている(日本人が履修の対象となっていない)ような「日本語」の授業の履修については、翻訳・通訳業務に必要な科目を専攻して卒業したものとは認められません。
- . 【日本の専門学校を卒業して「翻訳・通訳」の業務で就労した留学生篇】技術・人文知識・国際業務の許可・不許可事例(入国管理局発表)の解説【最新版】
- 1. 専門学校を卒業した留学生が通訳・翻訳業務で「許可」された事例
- 1.1. 【通訳・翻訳業務の許可事例 01】
- 1.2. 【通訳・翻訳業務の許可事例 02】
- 1.3. 【通訳・翻訳業務の許可事例 03】
- 2. 専門学校を卒業した留学生が通訳・翻訳業務で「不許可」になった事例
- 2.1. 【通訳・翻訳業務の不許可事例 01】
- 2.2. 【通訳・翻訳業務の不許可事例 02】
- 2.3. 【通訳・翻訳業務の不許可事例 03】
- 2.4. 【通訳・翻訳業務の不許可事例 04】
- 2.5. 【通訳・翻訳業務の不許可事例 05】
- 2.6. 【通訳・翻訳業務の不許可事例 06】
【日本の専門学校を卒業して「翻訳・通訳」の業務で就労した留学生篇】技術・人文知識・国際業務の許可・不許可事例(入国管理局発表)の解説【最新版】
専門学校を卒業した留学生が通訳・翻訳業務で「許可」された事例
【通訳・翻訳業務の許可事例 01】
公開された事例引用
翻訳・通訳学科において、通訳概論、言語学、通訳演習、通訳実務、翻訳技法等を専攻科目として履修した者が、出版社において出版物の翻訳を行うとして申請があったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、申請者が学んだ知識と従事する業務の関連性が明確であることが求められます。本事例では、翻訳・通訳に関する専門的な教育を受け、翻訳業務に直接適用できるスキルを修得しているため、学歴要件を満たしていると判断されたと考えられます。
【通訳・翻訳業務の許可事例 02】
公開された事例引用
国際ビジネス学科において、貿易論、マーケティング等の経営学に係る科目を中心に履修しているが、ビジネス通訳実務、ビジネス翻訳実務、通訳技巧などの翻訳・通訳に特化した科目を専門科目において履修した者が、商社の海外事業部において、商談の通訳及び契約資料の翻訳を行うとして申請があったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
商談通訳や契約資料の翻訳は、高度な語学能力と専門知識を要する業務であり、単なる一般的な会話通訳とは異なり、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で認められる職務だと考えられます。本事例では、翻訳・通訳に関する専門的な教育を受けており、業務内容に直結するスキルを修得しているため、学歴要件を満たしていると判断されたと思われます。
【通訳・翻訳業務の許可事例 03】
公開された事例引用
国際教養学科において、卒業単位が70単位であるところ、経営学、経済学、会計学等のほか、日本語、英語、ビジネス文書、ビジネスコミュニケーション等文章表現等の取得単位が合計30単位認定されており、日本語能力試験N1に合格している者が、渉外調整の際の通訳を行うとして申請があったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、申請者の学歴と業務内容が密接に関連していることが求められます。本事例では、申請者が日本語・英語を中心としたビジネスコミュニケーションに関する専門的な教育を受けており、通訳業務に直結するスキルを修得しているため、学歴要件を満たしていると判断されたと思われます。
専門学校を卒業した留学生が通訳・翻訳業務で「不許可」になった事例
【通訳・翻訳業務の不許可事例 01】
公開された事例引用
CAD・IT学科において、専門科目としてCAD、コンピュータ言語、情報処理概論等を履修し、一般科目において日本語を履修したが、日本語の取得単位が、卒業単位の約2割程度しかなく、当該一般科目における日本語の授業については、留学生を対象とした日本語の基礎能力の向上を図るものであるとして、不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の翻訳・通訳業務を許可されるためには、申請者が翻訳や通訳に関する専門的な教育を受け、十分な知識やスキルを修得していることが必要です。しかし、本事例では、申請者の専攻がCAD・IT関連であり、日本語の履修も基礎レベルにとどまっているため、翻訳・通訳業務に必要な専門知識を有しているとは認められなかったと考えられます。
許可の可能性があるとすれば
もし申請者が「翻訳・通訳学科」「国際ビジネス学科」「国際教養学科」などで、通訳技法や翻訳実務、日本語能力向上のための専門教育を受けていた場合、学歴要件を満たし、在留資格が許可される可能性があったと思われます。
【通訳・翻訳業務の不許可事例 02】
公開された事例引用
国際ビジネス専門学科において、日本語、英語を中心とし、経営学、経済学を履修したが、当該学科における日本語は、日本語の会話、読解、聴解、漢字等、日本語の基礎能力を向上させるレベルに留まるものであり、通訳・翻訳業務に必要な高度な日本語について専攻したものとは言えず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の翻訳・通訳業務を行うためには、申請者が通訳技法や翻訳実務、日本語表現の専門教育を受けていることが必要です。しかし、本事例では、日本語の授業内容が基礎的な会話や読解能力の向上にとどまり、翻訳・通訳業務に必要な専門知識やスキルを修得しているとは認められなかったと考えられます。
許可の可能性があるとすれば
もし申請者が「翻訳・通訳学科」「国際教養学科」などで、通訳技法や翻訳実務、日本語表現の高度な教育を受けていた場合、業務との関連性が認められ、在留資格が許可される可能性があったと思われます。
【通訳・翻訳業務の不許可事例 03】
公開された事例引用
国際コミュニケーション学科において、日本語の文法、通訳技法等を履修した者が、新規開拓を計画中であるとする海外事業分野において、日本語が堪能である申請人を通訳人として必要とする旨の雇用理由書が提出されたが、申請人の成績証明書及び日本語能力を示す資料を求めたところ、日本語科目全般についての成績は、すべてC判定(ABCの3段階評価の最低)であり、その他日本語能力検定等、日本語能力を示す資料の提出もないことから、適切に翻訳・通訳を目的とした業務を行うものとは認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」における翻訳・通訳業務では、高度な言語運用能力が求められるため、申請者が通訳技法や翻訳実務に関する専門的な教育を受けており、一定以上の成績を修めていることが重要です。本事例では、申請者の日本語科目の成績が低く、日本語能力検定などの証明書も提出されなかったため、日本語能力が翻訳・通訳業務を遂行する水準に達しているとは認められませんでした。
許可の可能性があるとすれば
もし申請者が、日本語科目で優れた成績を修めていたり、日本語能力試験(JLPT)N1などの証明を提出していた場合、業務との関連性が認められ、在留資格が許可される可能性があったと考えられます。
【通訳・翻訳業務の不許可事例 04】
公開された事例引用
翻訳・通訳専門学校において、日英通訳実務を履修した者が、ビル清掃会社において、留学生アルバイトに対する通訳及びマニュアルの翻訳に従事するとして申請があったが、留学生アルバイトは通常一定以上の日本語能力を有しているものであり、通訳の必要性が認められず、また、マニュアルの翻訳については常時発生する業務ではなく、翻訳についても業務量が認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
通訳業務の必要性が認められない
留学生アルバイトは一般的に一定の日本語能力を有しており、通訳が日常的に必要となる業務環境ではないため、通訳業務の必要性が低いと判断されたと思われます。
翻訳業務の業務量が不十分
マニュアルの翻訳は一度完了すれば頻繁に更新されるものではなく、翻訳業務が継続的に発生するとは認められませんでした。そのため、申請者が常時翻訳業務に従事することが困難であると判断されたと思われます。
【通訳・翻訳業務の不許可事例 05】
公開された事例引用
翻訳・通訳専門学校において、日英通訳実務を履修した者が、翻訳・通訳業務に従事するとして申請があったが、稼働先が飲食店の店舗であり、通訳と称する業務内容は、英語で注文を取るといった内容であり、接客の一部として簡易な通訳をするにとどまり、また、翻訳と称する業務が、メニューの翻訳のみであるとして業務量が認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
通訳業務が単なる接客業務の一部だけ
飲食店における注文受付は、一般的な接客業務であり、翻訳・通訳業務とは異なる単純業務に該当するため、「技術・人文知識・国際業務」の対象とは認められなかっと思われます。
翻訳業務の業務量が不十分
メニューの翻訳業務は、一度作成すれば頻繁に更新するものではなく、常時翻訳業務を行う環境とは認められなかったと思われます。
【通訳・翻訳業務の不許可事例 06】
公開された事例引用
日本語・日本文化学科を卒業した者が、人材派遣及び物流を業務内容とする企業との契約に基づき、商品仕分けを行う留学生のアルバイトが作業する場所を巡回しながら通訳業務に従事するとして申請があったが、その具体的な内容は、自らも商品仕分けのシフトに入り、アルバイトに対して指示や注意喚起を通訳するというものであり、商品仕分けを行うアルバイトに対する通訳の業務量が認められず不許可となったもの。

【許可理由の説明(予想含む)】
通訳業務の業務量が不十分
商品仕分け作業を行うアルバイトに対する通訳業務の必要性が限定的であり、常に翻訳・通訳を必要とする環境とは言えないため、業務量が十分であると判断されたようです。
翻訳・通訳業務よりも単純労働が中心
申請者自身が商品仕分け作業にシフト入りすることが前提となっており、業務の大半が単純労働に該当するため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では認められなかったと思われます。
今回の解説は以上です。ビザ申請サポート福岡 外国人支援センター(国際行政書士 河野尋志)ではビザ申請を丁寧に!早く!手続き致します。ご不明点があればお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料! 福岡を中心に、九州、全国対応が可能で、オンライン(ZOOM、LINE、WeChat、Teamsなど)での面談も対応しております。
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投稿者プロフィール 【行政書士 and 事業サポート 河野尋志】
企業の取締役として外国人の社員さんと一緒に国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。また行政書士業務を始めてからは、様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えて調整できます。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)