在留資格認定証明書(COE)の必要書類「労働条件通知書」の作成で企業が気をつけるべきポイント|福岡の就労ビザ専門行政書士が解説

在留資格認定証明書(COE)

外国人を雇用する企業にとって、「労働条件通知書」の作成は必須です。

海外に住む外国人材が、日本で就労するためのビザを取得するための在留資格認定証明書(COE)の交付申請をする際にも、労働条件通知書は審査の必要要素となります。

しかし、単に法律の要件を満たすだけではなく、外国人労働者が納得した内容で、採用後に安心して働ける環境づくりを見据えて書類を作ることも大切だと思います。

この記事を読んでわかること

  • 在留資格認定証明書(COE)申請時に必要な労働条件通知書(雇用契約書)の重要性
  • 外国人材が納得して働くために企業が考慮すべきポイント
  • 外国人雇用においてトラブルを防ぐための労働条件通知書作成の工夫
  • 福岡で外国人のビザ申請をサポートする行政書士が推奨する対応策

について解説します。

国際
行政書士
河野

弊所は福岡に事務所があり、就労ビザを専門に扱っているため、労働条件通知書のご相談がよくあります。労働条件通知書は社会保険労務士さんの専門なので、行政書士の立場では書類作成はできませんが、この記事に書いていることをご案内しています

福岡出入国在留管理局管内(福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)で在留資格(ビザ)の申請をお考えであれば、お気軽にお問い合わせください。

初回ご相談は無料、オンライン面談にも対応しております。

「労働条件通知書」作成の注意点とは?

1. 労働条件通知書はCOE申請に必要な重要書類

労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは、労働基準法第15条に基づき、企業が労働者に対して労働条件を明示する義務のある書類です。もちろん、日本人・外国人を問わず適用され、特に外国人の雇用においては、在留資格申請の審査において非常に重要な書類となります。

COE申請における労働条件通知書の重要性

在留資格認定証明書(COE=Certificate Of Eligibility)は、海外に住む外国人材が日本で就労ビザを取得する前に必要となる証明書です。COE申請時、労働条件通知書は「雇用の実態」を示す重要な証拠として提出が求められることが多く、労働条件通知書が適切に作成されていないと申請が不許可になるリスクがあります。

COE申請において入管が確認する主なポイントは以下のとおりです。

  • 雇用契約の実態があるか(架空の雇用ではないか)
  • 雇用条件が適正か(労働基準法違反がないか)
  • 外国人労働者が適切な業務に従事するか(在留資格の範囲を超えていないか)
  • 給与が適正か(日本人と同等以上の待遇か)

適切な労働条件通知書が提出されていない場合、入管から追加資料の提出を求められたり、最悪の場合、COEが不許可になることがあります。そのため、雇用条件を明確に示し、法的要件を満たした労働条件通知書を作成することが必須です。

COEと労働条件通知書(雇用契約)の関係については、以下の短時間の動画でも解説しています。

労働条件通知書と雇用契約書の違い

労働条件通知書と雇用契約書は混同されがちですが、以下のような違いがあります。

項目労働条件通知書雇用契約書
法的義務交付義務あり(労働基準法第15条)義務なし
目的労働条件を明示する雇用契約の成立を証明する
外国人労働者向けの必要性COE申請時に必須契約内容の誤解を防ぐため推奨

雇用契約書は法律上の義務ではありませんが、外国人労働者にとっては、契約内容が書面で明示されていることが重要です。特に、母国語での契約書があると、トラブル防止に役立ちます。

COEが不許可になる確率

就労ビザは申請をすれば必ず許可される訳ではありません。特に福岡出入国在留管理局管内(福岡・北九州・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)のCOE(認定証明書)の許可率は、2022年が84.9%2023年が87.6%と、全国最低水準です。

海外在住の外国人材を日本に呼び寄せる在留資格認定証明書(COE)交付申請が不許可になると、それまで様々な準備をしてきたことが無駄になってしまうため、慎重に準備することが重要です。

COE申請をスムーズに進めるためのポイント

  • 労働条件通知書の内容を明確にする:記載ミスや曖昧な表現を避ける。
  • 雇用契約書を併用する:契約内容の誤解を防ぐため、母国語版の契約書を用意する。
  • 在留資格の範囲を考慮する:職務内容が在留資格と一致しているか確認する。
  • 給与設定に注意する:日本人と同等以上の待遇を確保する。
国際
行政書士
河野

適切な労働条件通知書を作成し、COE申請をスムーズに進めることが、外国人雇用の成功につながります。

2. 外国人材に納得して働いてもらうための工夫

2-1. 契約書を母国語でも作成する

外国人材にとって、日本語で書かれた契約書の内容を正確に理解することは簡単ではありません。そのため、可能であれば母国語版の契約書を用意し、「契約内容を理解した上で承諾した」旨の文言を加えておくことが望ましいです。

例えば、

“私は母国語(〇〇語)で労働条件の説明を受け、雇用契約について十分に理解した上で承諾します。”

といった文言を契約書に入れることで、後のトラブルを防ぐことができます。

2-2. 分かりやすい表現を使う

契約書の文言は、日本人でも難解な表現が多いものです。特に外国人材にとっては、契約書の内容を正確に理解するのが難しいことがあります。そのため、可能な限りシンプルで分かりやすい表現を心がけることが重要です。

2-3. 給与の記載に注意(国籍による差別をなくす)

給与の金額は、日本人社員と同等以上であることが求められます。国籍による給与差別は許されません。むしろ、日本人にはないスキル(語学力など)を考慮し、適正な給与を設定することが望ましいでしょう。

2-4. 従事する業務を明確にする

外国人社員が従事する業務は、許可された在留資格の範囲内である必要があります。業務内容が曖昧だと、ビザ更新時に問題が生じる可能性があります。

2-5. 研修制度の記載に注意

特に「技術・人文知識・国際業務」ビザの外国人に単純労働の研修をさせると、ビザの条件違反になる可能性があります。研修内容を明確にし、在留資格の要件を満たしているか確認することが重要です。

2-6. 契約期間を明確にし、在留資格への影響を考慮する

有期雇用契約の場合、契約期間が短いと在留資格の更新が難しくなる可能性があります。可能な限り長期契約を検討し、契約期間と在留資格の期間が適合するように調整しましょう。

3. 在留資格(ビザ)申請をスムーズに進めるためのポイント

3-1. 労働条件通知書・雇用契約書に「停止条件」をつける

契約書には、「本契約の効力は、就労可能な在留資格(ビザ)を得ることを条件とするなどの文言を加えることで、在留資格(ビザ)が取得できなかった場合のトラブルを防ぐことができます。

3-2. 在留資格(ビザ)の種類に応じた適切な契約を結ぶ

在留資格の種類によって、認められる業務内容や契約期間が異なります。適切なビザの種類を把握し、それに応じた契約を結ぶことが重要です。

3-3. 申請書類を事前にチェックする

COE申請に必要な書類を事前に確認し、不備がないかチェックすることで、スムーズな申請が可能になります。特に労働条件通知書や雇用契約書は、申請者の在留資格審査に影響を与えるため、内容を正確に記載することが重要です。

3-4. 専門家に相談する

在留資格申請は専門的な知識が求められるため、行政書士に相談することで、適切な書類の作成や申請手続きを円滑に進めることができます。

国際
行政書士
河野

まずはお気軽にご相談ください。初回ご相談は無料、オンラインでも面談にも対応しています。

よくあるご質問と答え

労働条件通知書の記載内容に決まりはありますか?

労働基準法に基づき、賃金・労働時間・休日・契約期間などの基本事項を記載する必要があります。詳しくは、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーをご覧いただくのがおすすめです。

雇用契約書を交わさないとトラブルになりますか?

可能性があります。特に外国人は「契約は書面で交わすもの」と考えることが多いため、契約書を用意するのが望ましいと思います。

在留資格(ビザ)の種類によって契約書の内容は変わりますか?

変わります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」ビザでは単純労働をさせてはいけません。

労働条件通知書は外国語で作成する必要がありますか?

法的には日本語で問題ありません。しかし、外国人材が理解できるように英語や母国語でも作成してあげることをおすすめ致します。

在留資格(ビザ)申請が不許可になった場合の対処法は?

契約書に「本契約の効力は、在留資格の取得を条件とする」旨を記載し、リスクを軽減することが重要です。

契約期間が短いと在留資格の取得に影響がありますか?

契約期間が短いと、在留資格(ビザ)の許可期間も短くなります。企業と外国人双方が長期就労を望むのであれば、長期契約を検討することが望ましいです。

COE申請は、オンラインでの申請はできますか?

COE申請は、オンラインでの申請が可能です。自社で手続きする場合は、出入国在留管理庁公式ホームページをご確認ください。以下の短時間の動画でも解説しています。

まとめ

外国人社員と契約を結ぶ際には、日本人と同じ基準で対応することが基本です。

更に、外国人特有の事情を考慮し、契約内容の理解を促進する工夫が必要です。福岡で在留資格(ビザ)申請をサポートする行政書士として、企業が適切な書類を準備し、スムーズに外国人材を受け入れられるようサポートしています。

今回の解説は以上です。ビザ申請サポート福岡 外国人支援センター(国際行政書士 河野尋志)ではビザ申請を丁寧に!早く!手続き致します。

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弊所のサービス内容や価格、手続きの流れ、許可の可能性診断につきまして無料相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。オンライン(ZOOM、LINE、WeChat、Teamsなど)での面談も対応しております。

技術・人文知識・国際業務ビザ申請代行
国際行政書士 河野尋志

投稿者プロフィール 【行政書士 and 事業サポート 河野尋志】
外国人の社員さん達と一緒に企業の取締役として国際業務に取り組んで15年間、多くのインバウンド事業や外国語ツール(多言語ツール)の作成、貿易業務の調整に取り組んできました。また行政書士業務を始めてからは、様々な在留資格(ビザ)の申請経験も重ねてきました。外国人の皆さんの気持ち、日本の行政の考え方、企業の管理者の立場を考えてサポート致します。どうぞ、お気軽にお問合せください。
●資格:行政書士・通関士有資格者・総合旅行業務・国際ビジネス法務
●個人:1976年生まれ、宮崎県出身、1男2女の父、柔道3段(今は3級くらいの実力)

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